つくるくらし

好きなものとコンパクトに暮らす|my dot. life

住まいを選ぶとき、「3人家族なら2LDK、4人家族なら3LDK」など、広さの“相場”はどうしても気になってしまうもの。けれど暮らしで大切なものは人それぞれで、住まいにはもっといろいろな形があるはずです。
リビタが提案する「my dot. life」は、「便利な都心で街を活用しながらコンパクトに暮らす」+「余った資金で地方にもう一つ拠点を持つ」、そんな新しい住まい方の発想。当たり前と思われたことを軽やかに飛び越え、実践している人たちはなぜその暮らしを選び、何を感じているのでしょうか。
今回お話を伺ったのは、整理収納コンサルタントの本多さおりさん。
50㎡の住まいに家族4人ですっきりと暮らす本多さんに、余計なものを持たずコンパクトに心地よく暮らすヒントを聞きました。
 

■ものを減らしても「何も困らなかった」
 
「こうした取材を受けるまで、自分の家が小さいとはまったく思っていなかったんです」と笑う、整理収納コンサルタントの本多さおりさん。夫と2人のお子さんと暮らすのは、埼玉県内の1LDK・50㎡のアパートです。借景に恵まれた室内はコンパクトながらすっきりと片づき、小さなお子さんがいるとは思えないほど。
 
ものを増やしすぎず軽やかに暮らす秘訣を知りたいと、最初に見せてもらったのはクローゼットです。一目で見渡せる広さですが「オンシーズンの服は家族4人分、これで全部です」と驚きの言葉。
 

 
「洗濯物を一度に片付けられるように、家族の服を1カ所にまとめました。スペースを空けるために自分の服を断捨離したんですが、減らしても意外と何も困らないんですよ。むしろ選択肢が限られるから『何を着よう』と迷うことがなくて、気持ちがいいくらい。私にとっては迷うこと=煩わしいことなんだと気づきました」
 
子育てが始まってから「洋服は消耗品」と考えるようになった本多さんがたどり着いたのは、厳選したプチプラ服をワンシーズン着倒すこと。きちんとした場面でも使えるよう、ワードローブはモノトーン服が中心です。もちろんファッションへの考え方は人それぞれですが、ものを減らすことで気持ちや時間が解放される感覚は、少しうらやましく感じます。
 
そんな本多さんも、最初から少ないもので暮らしていたわけではありません。転機は新婚時代、40㎡の団地の一室に住み始めたこと。それまでお互い実家で暮らしていた夫婦二人分の荷物は団地の押し入れにとうてい収まり切らず、「やむなく持ち物を整理しました」と振り返ります。
 


「そこで分かったのが、『捨てても何も困らない』ということでした。なぜなら、必要なものは捨てないから。着ていないけどなんとなく持っていた服、いつかまた読もうと思っていた本や思い出の品なんかは、処分しても何も支障がなかったんです。そこから、『これは今必要なものか』と考える癖がついた気がしますね。“今”必要なものなんて、意外とコンパクトに収まってしまうものなんです」
 
例えばどんどん増える子どものおもちゃ類も「今使っているか」を基準にときどき見直し。おもちゃ箱にはいつも「一軍」だけが入った状態にしているそう。
 
「ウルトラマンにハマったら怪獣がみるみる増殖したり、子どもの興味次第でおもちゃはどんどん増えますよね(笑)。箱がいっぱいになったら、3歳の長男には『最近使っていないものは別の場所で休んでもらおうか』と声をかけて一緒に選び、見えない収納に移動します。捨てるわけではないから、嫌がらずに判断してくれますね。次回また一軍に繰り上がるおもちゃもあるし、しばらく登場しないものは時をみて本人に手放していいか相談しています」
 


仕事柄よく頂くという本も、「いつか読もう」と先送りにしていると結局読めないまま山積みになってストレスの元に。だからこそ「今読みたいか」を基準にジャッジして、読まない本は今読んでくれそうな人に潔く譲り、読み終えた本も手元に残すものは厳選しています。
 
「手放すと、気持ちが楽になりますよ(笑)。使っていないものって、すごく人を煩わせるんです。『読まなきゃ』『着なきゃ』『持っているのに使っていない私はダメだ』『収納に入らない』と悩ませる。使っていないものが家にあると、結局のところ生まれるのは“負”ばかり。極論ですが、今使うものだけ携えて身軽に生きられたら理想的だと思いますね」
 
■自分が何を持っているか、分からないから辛くなる
 
服でも本でも食器でも、「いつか使うはず」ととってあるものは誰にでもあるもの。けれど具体的に自分が何をどれだけ持っているのか、ぼんやりとしか思い浮かばないのではないでしょうか。こうした「分からない塊」が家にたくさんある状態は「心に負担をかけてしまう」と本多さんは話します。
 
「人は、分からないっていう状況がすごく気持ち悪いし辛く感じると思うんです。大切なのは、持ち物の全容を把握すること。私に整理収納を依頼するお客様も、ものを整理しただけで表情がパッと明るくなるんですよ。つかえが取れた!みたいな(笑)。
 
収納は闇雲に片付けてもダメで、ルールを決めないとリバウンドしてしまいます。『何がどれだけあるか』『どれをよく使って、どれをあまり使っていないか』が明らかになっていないと、収納の戦略を立てられません。その基本になるのが整理(=モノを分類すること)。収納よりも整理の方が大事なんです。ものと向き合うのは少し辛いけど、整理を乗り越えたら半分終わったようなものですね」
 


これまで200軒以上の住宅で整理収納サービスを行ってきた本多さんがおすすめするのは、持ち物を使う頻度ごとに「一軍」「二軍」「三軍」に分類すること。一軍は毎日のように使っているもの。二軍は週一回出番があるかないかのもの。それ以外は、実質ほとんど使っていない三軍です。
 
「整理の基本は分類です。感情を入れず、どのぐらい使っているかの事実に基づいて分けるだけなら辛くない。『捨てるものを決めなさい』と言われたら悩んでしまうけど、この段階では捨てるか決めなくて大丈夫です」
 
実際に分類すると、多くの人が「こんなにものがあるのに一軍はたったこれだけなのか」「一軍なのに全然ときめかないものばかり」とショックを受けるのだそう。
 
「そこで思い切って三軍を一軍に昇格させてもいいし、それができなくても、三軍を納戸など見えない場所にいったんしまい込んでしまうんです。すると使わないものがなくなって収納が使いやすくなるし、片付けもスムーズだしいいことづくめ。するともう、三軍の箱を開けることはないんですよ。三軍はすぐに捨てなくても、1年後にもう一度開けて考えてもいい。まずは全容を分かることが大切です。家の中の『分からない塊』が減ると、『もう無駄に増やすのはやめよう』と予防するようになって、ものを手放すことをネガティブに感じなくなる。そういう風に考え方が変わっていくと、極端な話、家ってそんなに広くなくていいんじゃない?とも思い始めるんですよね」
 


悩むのが「使わないけど好きだから捨てられない」と思うものの存在。好きなものと使いやすいものが一致しない時はどうしたら良いのでしょうか。
 
「使っているものは全部好き、という状態が理想ですよね。服も食器も、家にあるもののほとんどが『道具』だと思うんです。道具は使わなければ意味がない。私は器も調理用品も、少し高くても好きなものを選んで長く使うようにしています」
 
本多さんのキッチンにプラスチック製品はほとんどなく、木や金属など長く使えて経年変化を楽しめる素材で気に入ったものをセレクト。器は「何を乗せてもきれいで使い勝手もいい」という柏木千繪さんの作品が大半です。
 
 
「もちろん使わずに眺めて楽しむ付き合い方もあるけれど、もしそれにモヤモヤを感じるなら思い切って使ってみるか、手放すかした方がいいと思う。例えば惚れ込んで買ったけど着ていない服があったら、一度無理にでも着てみるんです。そして『気分が上がるな』とか『やっぱり素材に気を使うから日常着にはできないな』と判断する。そこで持ち続けるかどうか決めないと、いつまでも『持っているだけ』というモヤモヤした状態になってしまうから。
 
使っていないものを思い切って手放しても、意外と困らない。それに、もう捨てたくないから慎重にものを選ぶようになるんです。自分のことがよく分かってきて、『好きだけど、きっと使いこなせない気がする』と、もの選びの感度が上がってくる。自分の考え方や性格、あとは『下着は4セットあれば足りる』だとか、事実を元に検証することも大切ですね。身の回りのものを整理することは、何よりの自己分析だなと思います。
 
整理は単純に分類だから、やってみると意外とできるものですよ。その結果捨てるかは、すぐ決めなくていい。まずは『分けること・分かること』が重要です」
 
最初はカバンの中身や机の引き出しといった小さなところが始めやすい、とアドバイスしてくれた本多さん。自分と向き合う整理収納は、家の広さだけでなく自分らしい暮らし方を見直すきっかけにもなりそうです。


【プロフィール】
整理収納コンサルタント
本多さおり
 
「暮らしをシンプルに楽しむための整理収納」を提案するスペシャリスト。50㎡の1LDKアパートに夫、3歳の長男、1歳の次男と4人暮らし(2019年6月現在)。2010年に整理収納アドバイザー1級、2011年に整理収納コンサルタントの資格を取得後、個人宅の整理収納サービスを中心に活動をスタートし、訪問した住宅は200軒以上にのぼる(現在は受付休止中)。多数の書籍の執筆や監修を行う。近著に『悦な収納のすすめ』(主婦の友社)。
HP  http://hondasaori.com
blog  https://chipucafe.exblog.jp
 
文:石井妙子/撮影:古末拓也
取材・撮影:2019年6月