お金とくらし

クリス智子さん・お金にも家にも執着しない 大事なのは「暮らしをどう楽しむか」

J-WAVEのパーソナリティやTVのナレーターなど、多方面で活躍しているクリス智子さんは小学生のお子さんを持つ母親でもあります。子育てがしやすそうと選んだ鎌倉でリノベーションをしたご自宅は、こだわりのアンティーク家具が並び、柔らかで温かみのある洗練された空間。仕事と子育てと忙しい毎日を送りながらも「家でもいつも何かをクリエイトしているほうが調子がいい」と言うクリスさんに、日々の暮らしで大切にしているモノやお金の価値観、子育てのコツなどを伺いました。
 
【プロフィール】
クリス智子(くりす・ともこ)
 5月1日、ハワイ生まれ。上智大学卒業と同時にFMラジオ局・J-WAVEでナビゲーターデビュー。現在は同局で午後の帯番組『GOOD NEIGHBORS』(月-木 13:00~16:30)でパーソナリティを務めるほか、TVナレーション、イベントMCやトークゲスト、雑誌執筆など幅広いフィールドで活躍中。
 

 
■家づくりが趣味で居場所をつくることが好き
 
——クリスさんは幼少期から数えると22回も引っ越しをされていると伺いました。
 
子どもの頃は両親の仕事の都合などもありましたが、大人になってからも引っ越しを繰り返していますね。
 
家づくりが趣味なんだと思います。居場所をつくるのが好きなんですね。犬の散歩をしているときにいいなと思ったマンションを見つけて、すぐに空きを調べて引っ越したこともありました(笑)。気分転換とか住んでいる家に飽きたとかいうわけではなく、単純に住む場所をつくる行為が好きなんです。
 

引っ越しを機に新しく購入したというリビングスペースのソファとテーブル。アンティーク家具が並ぶクリス邸のなかでも違和感なくマッチしている。
 
——家を探したり選んだりするときに、大切にしていることはありますか?
 
不動産屋さんに相談するときの条件のようなものは、あまり重要視していないですね。「家までの道のりがいい」「緑が多い」「散歩をして気持ちがいい」とか、実際に家に行って家の周りを歩いてみないとわからないことが、物件選びのポイントなんです。正直、説明がつかないので、不動産屋さんを困らせることが多いです(笑)。住処を探すという意味では、感覚的というか動物的な感じかもしれません。
 
■家も家具も「どう変えてどう使うか」を考えることがおもしろい
 
——6年ほど前に都内から湘南に移住され、2年半前からは今の鎌倉に住んでらっしゃいますが、そのきっかけはなんでしょうか?
 
一番は子どもですね。逗子の友だちの家に遊びに来たときに、ここなら子育てしやすそうだなと思いました。私が小さい頃は引っ越しが多かったので、子どもにはひとつの場所で育ってほしいという気持ちもありました。ただ当時は、「お試しで住んでみよう」というくらいの軽い気持ちでしたね。暮らしてみて違ったらまた都内に戻ればいいと。
 

ひと際目を惹くのが、リビングダイニングに鎮座する1960年代のフランスのアンティーク家具。用途を変えながら長年愛用している。
 
実際に湘南に住んでみると、会う人会う人、皆さんがとってもフレンドリーで居心地が良かったんです。それで本格的に物件を探しましたね。この鎌倉の家はたまたま不動産屋さんに紹介してもらったもので、当初は鎌倉という場所自体、候補にはありませんでした。でもせっかくなので一度見てみようと思って訪れたら「ココだ!」って。
 
これまで賃貸が多かったのですが、この鎌倉の家は購入しました。賃貸は住まいづくりをいろいろ試したり経験したりする時間だったので、家を所有してその経験をカタチにしたいと気持ちもありましたね。
 
——経験をカタチするということが、この家のリノベーションにもつながるのですね。
 
アンティークの家具もそうなんですが、決して古いものが好きなわけではなく、古くなっていい味が出そうなもの、姿を変えることで長く持てたり使えたりするものが好きなんです。家でも家具でも元々あるものを箱と捉えて、自分でどう変えるか、変えてどう使うかを考えることがおもしろいんです。使い道を決められるのが嫌なんですね。自分で決めたいんです。だからリノベーションを選択したのでしょうね。
 

ゲスト用の洗面スペースは、まるで欧州のホテルのような空間に。クリスさんお気に入りの壁紙と海外から取り寄せた洗面ボウルが迎えてくれる。
 
家は自分をチューニングする場所——何かをクリエイトすることで調子を整える
 
——都内と湘南での暮らしとでは、生活環境も大きく変わったと思います。実際に暮らしてみていかがですか?
 
都内までの移動時間は増えましたが、その時間をプライベートなことに充てたり仕事をしたりと有意義に過ごしています。オン・オフではありませんが、仕事をする場所と帰ってくる場所がよりはっきりしてきたので、生活にメリハリがつくようになりましたね。
 
——そういった暮らしの中での住まいとは、どういう位置づけですか?
 
自分をチューニングする、整える場所ですね。好きなものばかりに囲まれていればいいわけではないのですが、目に入るものは心地いいもので揃えています。家は当然、オフの場所なのですが、私はゆっくりするのが苦手なので、家でも常に動いていますね。料理をしたり、ものを作ったり……何かをクリエイトしているほうが私は調子がいいんですね。
 

リノベーションした書斎には、京都のミシン屋で見つけたミシン台や、用途を変えながら25年以上愛用しているシェルフが置かれている。
 
■子どもにはお金の価値よりモノの価値をわかってほしい
 
——クリスさんのお子様は現在小学生とのこと。仕事と子育てを両立させるコツはありますか?
 
あまり深く悩まないことじゃないでしょうか。悩む時間がもったいないです。その時間でどうすればいいエネルギーになるか、楽しくできるかを考えます。たとえば朝、時間がないのに子どもがぐずったりしますよね。でも、そこで「早く、急いで!」と怒っていたらこっちもストレスが溜まりますし、子どもも嫌な気持ちになってしまいます。そういうときは怒らず、「早く外に出たほうが勝ち!」のようなゲームにしていますね。スムーズに進めるには、そのとき大人が子どもにどう接するかで結果が違ってくるんですね。
 
子どものいいところは時間の概念がないところだと思うんです。大人の時間の概念を押し付けずに、子どもらしくいさせてあげたいですね。子育ては自分の発想次第でどうにでもできるかなと。
 

 
——「時間の概念がない」ように、子どもには「お金の概念」もないと思いますが、金銭教育はどのようになさっていますか?
 
お金の価値がわかるというよりも、モノの価値がわかる子になってほしいと思っています。たとえばぬいぐるみを買うのではなく、ぬいぐるみの素材を買って子どもに作ってもらったりもします。作ってみてその苦労がわからないと、それが高いか安いかわからないと思うから。
 
——お子様から「これ欲しい、買って」と言われたときはどうしていますか?
 
子どもが何か買って欲しいと言ってきた場合は、最初からダメとは言いません。「なぜそれが欲しいのか」を考える時間を与えてプレゼンテーションさせていますね。子どもも、まぁ立派なプレゼンテーションをしてきます(笑)。結果的に会話もよくするようになりますし、お互いの考えや価値観が理解できるようになるんです。
 

門を抜けると竹林に囲まれたアプローチが続く。大規模なリノベーションは内装のみで、外観はほぼ手を加えていないという。
 
■お金は愛しいものに変換したい
 
——最後に、クリスさんにとってお金とはどんな存在ですか?お金とどのように付き合っていけば豊かな暮らしができるでしょうか。
 
お金は何か愛しいものに変換するのが一番いいと思います。それは消えてしまうようなもの、たとえば時間や食事、経験でもいい。モノではなくていいんです。お金って、時と場所、使ったり持ったりする人が変わると、価値がなくなる場合もある。でも誰もがキレイだと感じるものだったら、どんな場所でも誰にとっても価値が生まれる場合もあります。
 
あまりお金に執着したくないですし、左右されたくないんです。お金だけでなく何事においてもそうかもしれません。家も同じで、もしこの家を明日引っ越すとなっても、日々愛した分、逆に、受け入れられると思います。もちろんお金は大事ですが、お金がないと生きていけないとは思っていません。お金や家がなくなったらといって自分じゃなくなるとは思いたくないですね。どんな場所でもどんな状況でも、「どう楽しむか」を考えてクリエイトすることが、私にとっての豊かな暮らしかな。
 
取材・撮影:2019年2月
writing:大内康行(ライター、エディター)
photograph:森口新太郎