風、ひと、酒-横須賀【前編】2つの国が混ざり合うカオスを体験する街|まちとのつながり

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風、ひと、酒-横須賀【前編】2つの国が混ざり合うカオスを体験する街

目 次
  1. 1街のなにげない「路」にみるさまざまな混ざり合い
  2. 2アメリカ人が街に出ていくきっかけの一つとしての「教育」

―近い将来、湘南で暮らしたい ―
滞在だけでは知りえなかった湘南の魅力をお届け。 BUKATSUDOの人気講座「近い将来、湘南で暮らしたい学」でモデレーターをつとめるミネシンゴさんによる連載コラムです。

今回横須賀の街を案内してくれるのは「カリアゲ横須賀三浦」の岩崎聖秀さん。

風、ひと、酒-横須賀【前編】2つの国が混ざり合うカオスを体験する街

岩崎さんは横須賀に生まれ育ち、現在は市内でゴルフ練習場を経営するほか「カリアゲJAPAN」など不動産関連事業を運営されています。とにかく人を繋ぐことが得意。かくいうミネも三崎に移住したきっかけは岩崎さんの三崎案内からでした。そんな岩崎さんが思う横須賀の魅力って?

岩崎:「横須賀市全体人口が40万人弱なのに対して、アメリカ人は2万5000人住んでいると言われています。そんな横須賀の魅力って、街の中にごく当たり前に迷彩服や制服を着た米軍や自衛官、日本人のおばさんや子どもが共存して道を歩いていること。子どもの頃から見慣れた風景だけれど、実はこれだけの密度で混ざってる感じってとても魅力的でかっこいいと思っています。今日はそんな異なる二つの国が混ざり合ったカオスが作る横須賀を案内します」

街のなにげない「路」にみるさまざまな混ざり合い

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スタートは京急線横須賀中央駅を降りてすぐの三笠商店街から。

岩崎:「実は日本最古のアーケード街、三笠商店街は屋根があるから、毎日ものすごい数の人が通り抜けていきます。通行人の8割は通り抜ける理由を『無目的』と答えるみたいで、中のお店に用がある人以上に、先のドブ板通りや千日通りに抜けてく人が多いのかも。
このアーケード街には高校卒業後間も無く商売を始めた同級生もいる馴染みのある場所です。カオスな感じがどこか東南アジアっぽいんだよねぇ」

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ミリタリーショップかと思いきや、ふつうのお土産屋。
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近くの不動産屋の正面に並ぶ物件情報もご覧のとおり。

岩崎:「よその人が来ると英語の物件情報に『おぉっ』とびっくりする。アメリカに来たような気分になるよね」

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車もよく通る千日通りの脇には、東京にもあるような狭い路地がたくさん。並ぶ旗や看板には何十年も店に構えられていた昭和のような空気感があります。
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奥に見えるのは1962年創業、街の老舗焼き鳥屋「相模屋」。

岩崎:「名物の自動焼鳥マシンという機械があるんだけど、他で見たことがないから多分ココの特許なんじゃないかと思う。横須賀市民なら知らない人はいない定番のお店です。中学校の帰りにここに寄って立ち食いした思い出を持ってる人も多いんじゃないかな。
それに加えて、ここも横須賀らしく『カオスに混ざる』光景がある。外国人や子どもやおじさんおばさん、老若男女や国籍問わず混ざって飲み食いしてるのは日常茶飯事です」

アメリカ人が街に出ていくきっかけの一つとしての「教育」

続いて案内されたのは商業ビルの一角にある「横須賀バイリンガルプリスクール」(以下YBSプリスクール)。
開いたドアの向こうでは、ミニサイズの日米混合カオスが繰り広げられていました。

風、ひと、酒-横須賀【前編】2つの国が混ざり合うカオスを体験する街
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岩崎:「ここを運営している井上さんは『混ざる』ということをテーマに教育事業をされてる方なので、その現場を見てもらいたいと思って案内場所に選びました。しかし、子どもたちは寝てるし描いてるし、日本語も英語も混ぜこぜで、めちゃくちゃだよね(笑)」

風、ひと、酒-横須賀【前編】2つの国が混ざり合うカオスを体験する街

「YBSプリスクール」運営代表 井上芙美さん:「アメリカ人は朝7時から午後3時頃まで働いてる人が多いので、午後2時頃がお迎えのピーク。今はちょうどアメリカ人のお迎えラッシュが落ち着いて、次は18時頃に日本人の親御さんが来るピークが来ます」

井上さんが横須賀市内の雑居ビルでYBSプリスクールの前身となる保育園を始めたのは2014年のこと。2年前に商業ビルの中に移転し、現在は週2-3回通園する子どもを合計すると250人に上るという。現在はYBSプリスクールの他にも市内外でバイリンガルスクールを展開しています。

井上さん:「雑居ビルにいた頃は国籍を特に意識せず受け入れる保育園を運営していて、むしろアメリカ人の割合が少なかったのですが、もっとアメリカ人を入れようと思ったきっかけが子どものレゴ遊びでした。」

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井上さん:「ある時、日本人とアメリカ人の子供同士がレゴの取り合いの喧嘩を始めたんです。アメリカ人の子が英語で『なんで取るんだよ!』と怒ってるところを日本人の子が『NO!』って泣きながら英語で言い返してる。
その状況を見たとき、これだ! と思いました。月何十万もかけてインターナショナルスクールに通わせなくても、この雑居ビルの一小部屋でこの英語力が養える横須賀ってすごいとこだぞ!と。
YBSでは子どもは好きな言語を話してよくて、子どももお互いの言語を教え合いましょう、というスタイルです。日本人も週3回も来ると自然とアメリカ人の子とコミュニケーションを取って遊んでいるのが子どもの柔軟性ならではですよね。これはアメリカ人:日本人の比率が7:3だからこそ実現できること。アメリカ人向けに彼らが入りやすい場所を作ったら、結果的に後から日本人も入るようになりました」

岩崎:「インターナショナルスクールスクールは最近は他にもできてきてるけど、YBSのような比率を保っていて日米が混ざるバイリンガルな場所は他にないと思います。アメリカ人が入りやすいから結果的にそうなってるんじゃないかと。
井上さんがすごいのは、彼女の学校を作ろうという熱意もそうだけど、これまでベース(米軍関係者住宅)の中で生活が完結していたアメリカ人が、彼女が作る学校をきっかけに少しずつ街に出て来るようになったということ。価値観が多様化している中で、ビジネスとしてこれまで人がやってこなかったところがしっかり見えて行動に起こしてるから、ニッチ需要で止まっていたのがこれからどんどん広がっていくはず」

井上さん:「せっかく日本にいるのに、特に米軍関係者はなんでもベースの中で揃っちゃうから日本語を使えなくても生活できてしまうんですよね、それではもったいない。日本語を教えることと外国人を街に連れ出すことが私の仕事です。とにかく連れ出すことができるのが私しかいないからそこは緩めちゃいけないなと。結局学校ってコミュニティだから、教育する以外でその背景にいる家族をどう巻き込んでくかが重要なんですよね。」

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米軍関係者は転勤族。移り変わりが激しいため、4年前に商業ビルに移転した当時のメンバーはもう全員日本にいないのだそう。YBSのエントランス脇には、子どもと保護者が保育園を出ていくときに書いたメッセージや絵が壁いっぱいに残されている。

商業ビルから少し歩いたところにある神奈川歯科大学の敷地内でも、空き教室を使用してYBS 小学校・学童が開講されている。取材時は夏休みで、日本人の小学生も一緒に学童の時間帯だった。

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井上さん:「開講して1年、アメリカ人がだいぶ日本語を喋れるようになってきました。」

教室の壁にも、アメリカの学校ならではの時間割、日本の学校によくある掛け算表、漢字の書き順などがごちゃっと混ざっている。

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岩崎:「いいなあ、アメリカ人の子が『はっぱろくじゅうし』とか言ってるの聞いてみたいな(笑)」

井上さん:「今は日本人の小学生が入れるのは学童の時間帯のみですが、いずれ日本人にも通常授業を受けてもらいたいなあと思ってます。4-5年後にはこれを広めらるようにしたいです。」

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井上さんが展開する学校で育った日本人やアメリカ人の子どもが大人になった時の横須賀にはどんな空気が流れているだろう、と未来に思いを馳せながら、すでに現在変化が起こっている日米の子どもとその家族が暮らす横須賀の街中を案内してもらうことに。

 

「戦後史を横目に日本人とアメリカ人が交流するドブ板通り」
後編に続く

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