豊かに暮らすひと

植物の力を感じながら、一日一日を全力で生きる。<3/5>
壱岐ゆかりさん THE LITTLE SHOP OF FLOWERSオーナー

原宿駅の近く、木々が茂る一軒家の軒先に、壱岐ゆかりさんがオーナーを務める「THE LITTLE SHOP OF FLOWERS」はあります。店頭にはニュアンスある色味の花が並び、枯れる過程も楽しめるブーケなど新しい花のかたちを提案しています。日本と海外を繋いでPRをする爆速の人生から一転、出張先で出会った自己流の花屋に触発されて、現在は植物に囲まれた暮らしを送る壱岐さんにお話を聞きました。

今の暮らしに無理のない範囲で、自分らしい住まいにしていく

— 「THE LITTLE SHOP OF FLOWERS」は、冒頭に出た「子どものころに憧れる可愛いお花屋さん」とは違い、ユニセックスな雰囲気があるように感じます。

私が可愛らしいものより、男性寄りというか、シンプルなものが好きなので、等身大の自分らしいお店になりました。店名の「THE LITTLE SHOP OF FLOWERS」も、雑学王の友だちが私の趣味思考を熟知した上で付けてくれた名前で、映画の「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ(※)」からとってくれました。この映画を知っている人なら、お店の雰囲気や方向性を理解してくれるかもと。

植物が好きというより、色が好きという理由で花屋をはじめたので、いつも色合いが豊富な店でいたいと思っています。たとえば、自然にはあまり存在していない青い花は、着色されたものを含めて取り揃えることは多いです。私は、花屋はこうあるべきというものを知らなかったので、好きな色合いで季節感もあって、という視点でセレクトしています。

今でも、色を見て仕入れていますが、迫力のある1色ではなく、束にしたら新しい色合いが生まれるような奥深い色を持つ花を選んでいます。花束はキャンバスに描くような感覚で作りたくて、陰影が明るいものから暗いものまでをグラデーションのように揃えられると、すてきな花束になったとうれしくなります。


店内は様々な彩りの花のほかに、額装された押し花やアクセサリーも置かれている

— 「THE LITTLE SHOP OF FLOWERS」は店内にドライフラワーが多くて、思い入れもあるように感じます。

花屋を始めたころは、100本仕入れても100本残る状態だったから、残った花材を天井に干していたんです。そうすると、この花はドライフラワーでも良い感じになるとか、この種類はダメというのが分かってきて、ではドライと生花を組み合わせたらどうなるかなど、実験を繰り返してしていました。この頃に、ドライと生花をブーケにする発想や、ドライになってもきれいな花束をつくるセンスが鍛えられたと思います。

ドライフラワーは、花をもらった瞬間を残せるという視点で良いなと思ったのはこの時です。ウェディングブーケやプロポーズ・誕生日の花は残しておきたい花の典型なので、これをドライフラワーや押し花にして残しておくのは良いアイディアだと思いました。花を物っぽく扱いすぎかもしれないけれど、残しておくという視点でも花は楽しめるという発信は続けたいと思っています。

店の天井は、花を吊るしてドライにする場所になっている。後ろの木々を背景に、ドライフラワーがきれいに映えている

— 具体的に、花屋で買えるものでドライフラワーにしやすい花を教えてください

芍薬はきれいな色のままドライになります。あとはエリンジウムやアザミも、ドライにしやすいです。スモークツリーもきれいだけれど、ドライになる過程で細かい花が落ちていくので、掃除が大変ですね。基本的には吊るすだけできれいなドライフラワーになりますが、シリカゲルという乾燥剤を入れて強制的に乾燥させる方法もあります。

—家に生花を飾るときに、壱岐さんが意識していることは何ですか?

季節の花を飾ります。同じ種類の花を、どっさりとシンプルに生けるようにしています。違う種類の花なら、玄関・キッチン・トイレ・洗面室など、いろんな場所に1本ずつ点在させて生けています。私は、この2つの方法を1週間に一度、花を変えて飾っています。

— 花を飾る場所が欲しいなど、住まいへのこだわりはありますか?

各部屋の仕切りが無い部屋が理想ですね。ものの多くない空間が好きなので、家具を部屋の隅のすべてに置かないようにしています。
今の家は花を飾るための棚がありますが、もっとあると良いなと思います。賃貸とはいえ自分らしさは出したいから、本当は壁に棚をつけたいのですが、DIYをするのは時間的に無理があるのでやっていません。今の家はベストな空間ではないけれど、自分にとって居心地のいいスペースになっています。

引越しが大好きなので、今の家にずっといることはないと思います。家は買わずに引越しを続けるでしょうね。お金の効率が悪いから、いつまでそれを続けられるか分からないけれど、その時々に応じてベストの部屋をつくっていくと思います。

「派手なブーケを」というオーダーのアレンジメントをする壱岐さん。色とりどりの花を手際よく束ねていく
 
— 昼夜の関係がなく働いていたPR業から花屋になって生活が変わったわけですが、暮らしのなかに花がある効能について、どう感じていますか?

植物のパワーはすごく感じていますが、言い過ぎるとスピリチュアルになるのであまり言っていません(笑)。でも、植物の近くにいると全然違います。自分が生きているという感覚から違うんです。何が違うの? と言われると困るのですが、花が邪気を吸い取ってくれる感じです。

PR業のころは明るいうちに働くという生活のリズムから離れていたから、植物が部屋にあっても一緒に暮らしている感じはしなかったし、私の威力が強すぎるからか(笑)、毎回枯らしていました。
花屋になってようやく自然のリズムに乗って、今は植物と共生ができています。植物は本来は薬として使われていたこともあるぐらいだし、気を良くしてくれるという効能があると思います。

※1960年に公開されたアメリカの映画。言葉を話し、人の血を肥料に育つ植物・オードリージュニアと、花屋の店員シーモアが繰り広げるB級ホラー