くらし談義

音楽もジャンボリーも故郷も、すべてが僕の暮らしの一部だから<1/5>
坂口修一郎さん BAGN Inc.代表・Double Famous

無国籍音楽のエスペラント楽団・Double Famousとしての活動のほか、ソロミュージシャンとしても様々なプロジェクトに参加している坂口修一郎さん。一方、故郷・鹿児島では、音楽・クラフト・アート・食・文学などを楽しむクロスカルチャーな体験型野外フェスティバル『GOOD NEIGHBORS JAMBOREE』を主宰。そのほかにもローカルをテーマにしたコミュニティ・カレッジを企画するなど、音楽のジャンルにも活動のフィールドにも捉われずに活動する坂口さんのお話には、“豊かに暮らす”ための考え方のヒントが詰まっていました。

PROFILE

1971年 鹿児島生まれ。1993年無国籍音楽のエスペラント楽団・Double Famousを結成。音楽活動の一方、アパレルブランドを経て代官山UNITを設立。2010年より故郷鹿児島でクロスカルチャーな野外イベント『GOOD NEIGHBORS JAMBOREE』を主宰。東日本大震災後には緊急支援で来日したジェーン・バーキンのサポートバンドをオーガナイズしワールドツアーに参加した。現在はランドスケーププロダクツ内にディレクションカンパニー・BAGN Inc.を設立。ジャンルを越境したイベントのプロデュースに携わっている。

森の学校で催されるフェスティバル「GOOD NEIGHBORS JAMBOREE」 

— 2010年から鹿児島で開催されている「グッドネイバーズ・ジャンボリー」ですが、どんな内容のフェスティバルなのですか?

坂口さん 
「グッドネイバーズ・ジャンボリー」のテーマは、「みんなでつくるフェスティバル」。今年2016年で7回目の開催になります(※「GOOD NEIGHBORS JAMBOREE 2016」は2016年8月20日開催)。音楽はもちろん、クラフト作家によるワークショップや、映画の上映会、デザイナーや写真家によるセミナー、地元の食材を使ったフードなど、いろんなジャンルのプログラムを展開していて、大人も子どもも、いろんな人が楽しめるお祭りです。

音楽はみんなで盛り上がりやすいものですが、それだけだと「音楽好き」な人しか集まらないじゃないですか。ジャンルレスにプログラムを用意しておくことで、「陶芸のワークショップをやりたくて来たけど、ちょうどやっていたライブのアーティストに興味を持った」とか、「ライブを見に来たけど、クリエイターのセミナーを覗いてみたら面白かった」とか、そうやって新しいものや人とのつながりが広がっていったら面白いと思って。

「グッドネイバーズ・ジャンボリー」は僕ら主催者側が用意したプログラムをただお客さんが楽しむお祭りではなくて、主催する僕らも、コンテンツを提供する音楽家やお店も、お客さんも、みんながこのお祭りを楽しむ側であり、参加者みんなでつくるお祭りなんです。「1品持ち寄りのパーティー」のイメージですね。歌を歌う、楽器を演奏する、ものを作る、料理を作る、踊る、ヨガをする……、何か得意技を持っている人たちが集まって、それをお披露目しつつ、お互いやってみようよ!というような。

でも、いろんな人に来てほしいからといって、敷居を下げすぎてもいけないんです。ある一定のクリエイティビティは維持しないと、イベントの質が下がってしまうから。その部分をディレクションしつつ、間口は広くして、たくさんの人にいろんなきっかけを与えられるイベントづくりに取り組んでいます。

課題になったのは開催場所でした。公園では利用制限が多くて、かといって従来のライブ会場のような出来上がった場所でやるのもイメージが違うなって。「グッドネイバーズ・ジャンボリー」の開催場所である「かわなべ森の学校」は廃校になった小学校で、芝生のグラウンドがあり、昭和8年に建築された校舎や木造の講堂も残っています。一番近い民家とは2キロ以上の距離があって音の問題もないし、鹿児島市内からのアクセスもいい。定型のない「みんなでつくるお祭り」の舞台にぴったりの場所だったんです。


『GOOD NEIGHBORS JAMBOREE 2015』より。音楽はもちろん、アートやクラフト、映画、文学など、さまざまなプログラムが展開されており、大人から子どもまで楽しめる。


— 坂口さんが故郷である鹿児島で「グッドネイバーズ・ジャンボリー」を始めることになったきっかけを教えてください。

坂口さん そもそもの動機は、「自分たちの音楽をやるのにフィットする場所をつくりたい」という思いでした。ダブル・フェイマスの一員として全国各地で音楽活動を行ってきましたが、音楽のジャンルだったりパフォーマンスのあり方だったり、それぞれのハコごとに何となく縛りがあることに窮屈さを感じるようになっていたんです。

そんなとき、代官山にあるクラブUNITの立ち上げに参加することになって、場づくりに関わるようになっていきました。そうして音楽活動と並行していくつかのイベントプロデュースをするうちに、故郷である鹿児島でも何かできないだろうかと思い始めたんです。

今、一緒にビジネスをしているランドスケーププロダクツの中原慎一郎くんは同じ鹿児島出身で、さらに同い年ということで以前から親しくしていました。僕が鹿児島で何かできないかと考え始めた当時、中原くんは鹿児島で、古い石蔵をリノベーションした家具なども扱うカフェ「DWELL Playmountain」(2010年7月よりショップ名を「GOOD NEIGHBORS」に変更)をやっていて、それにいろいろな衝撃を受けたんです。

まず、東京に暮らしていても「故郷に仕事をつくる」という形で地元と関わることができるんだ、ということ。そして、同じくランドスケーププロダクツの岡本仁さんが執筆した「僕の鹿児島案内」(出版:ランドスケーププロダクツ)という鹿児島の店やモノを紹介している本があるんですが、地元に暮らしているときはただ通り過ぎるだけだったお店が、実は素晴らしい湯豆腐屋だったりして、まさに灯台元暗しというか、地元のことを全然わかっていなかったことにも衝撃を受けて。

中原くんたちの活動を通じて鹿児島でものづくりする若手の人たちと出会い、そこで起きているムーブメントを目の当たりにしたとき、「ここでやったら絶対盛り上がる」そう直感して、イベントを立ち上げました。


『GOOD NEIGHBORS JAMBOREE 2015』より。もちろん音楽コンテンツも盛りだくさん。アーティストによるライブや参加型のパフォーマンスなど、音楽の楽しみ方もさまざまに提案。