くらし談義

北欧のライフスタイルに教わった「フィットする暮らし」の心地よさ。<2/5>
青木耕平さん・佐藤友子さん 「北欧、暮らしの道具店」運営・株式会社クラシコム

食器、日用品、ファッション小物など、暮らしの道具を紹介している『北欧、暮らしの道具店』。日々を心地よく暮らすための提案が詰まったさまざまな読み物も人気のネットショップです。ショップを運営する株式会社クラシコムは、「全員18時退社残業なし」というワークスタイルを徹底しながら業績アップを続ける企業としても注目を集めています。今回はクラシコムの代表取締役・青木耕平さんと、『北欧、暮らしの道具店』の店長も務める同社取締役の佐藤友子さんに、「フィットする暮らしづくり」についてお話を伺ってきました。

 
「フィットする暮らし」の編集に役立つコンテンツを提供していきたい
 
―現在の『北欧、暮らしの道具店』では、北欧以外の国や日本のアイテムも扱っていますが、アイテムはどのような視点でセレクトしているのですか?
 
佐藤さん 北欧のライフスタイルに通じるもの、お客様に“『北欧、暮らしの道具店』らしさ”を感じて頂けるセレクトを心掛けていますね。それと、私たちが本当に欲しいと思えるものであることを何より大事にしています。
 
青木さん
 好きじゃないものを人に薦める文章を書くには、テクニックが必要になります。テクニックを持っている人を採用するのは大変なので、本人が思ったことを書けばOKというのは、マネジングする上でもスタッフ採用の面でも、非常に合理的なんですね。クラシコムでは自社サイトでしかスタッフ募集をしていないので、応募してくれる人はほとんどが『北欧、暮らしの道具店』のお客様か読者。なので、ほとんど教えなくても『北欧、暮らしの道具店』らしい文章が書けてしまうんです。
 
―『北欧、暮らしの道具店』の商品紹介は、商品へのスタッフの思い入れが感じられて読み応えがあります。商品紹介以外にも、収納や料理の特集、スタッフのお気に入りアイテムを紹介する連載など読み物が豊富で、まるで雑誌を読んでいるような気持ちになります。
 
青木さん ある時期までは広告を使って集客していたのですが、「広告ゼロで収益アップ」という理想を実現する方法はないか?と考えたんです。妄想レベルの理想で、当時はスタッフにも白い目で見られましたが(笑)、最初から無理だと決めつけてはいつまで経っても理想にたどり着けません。そこで思い至ったのが、サイトのメディア化でした。
 
広告は出す側と、受ける側がある。受ける側は、読者に対して常に有益で面白い情報を提供しているから、そこに読者が集まるわけですよね。僕らのお客様が喜んでくれるような情報を読み切れないほど提供していこう、とショップの内容を転換していきました。
 
それまでも開店当初からブログの発信やメールマガジンの発行をしていて、商品紹介記事も大量に作っていましたから、もともとメディア的だったんです。変えたことといえば、スタッフそれぞれがパーソナルペースで取り組んでいたコンテンツ作りを、企画ベースにしたこと。あとはショップ向きの人材からメディア向きの人材確保へシフトしたことぐらいでしょうか。
 
僕らにとっては読み物もアイテムと同じくお客様への提供物。『北欧、暮らしの道具店』というメディアを通じて、「ものや「こと」を発信していくことが僕らのサービスなんです。
 

撮影場所にも使われるオフィスの打ち合わせスペース。天井が高く、窓から燦々と光が注ぐオフィスには、爽やかな空気が漂う。
 
―メディアとしての『北欧、暮らしの道具店』は、どんなコンセプトで編集しているのでしょう?
 
佐藤さん 北欧の人々の暮らしぶりに衝撃を受けたという話をしましたが、私には彼らが、他者や他国との比較ではなく自分で自身の暮らしを肯定している、自足しているように感じたんです。クラシコムが掲げる「フィットする暮らし、つくろう」というビジョンが、『北欧、暮らしの道具店』の編集方針そのものでもあるのですが、私たちが伝えたいのは「自分の物差しで、満足できる暮らしをつくっていきましょう」というメッセージ。
 
私たち自身も、フィットする暮らしを求めて日々模索している生活者のひとりで、コラムや特集で自分たちの暮らしに触れたり、さまざまな方の働き方や暮らし方をレポートさせて頂くのも、読者の方にたくさんの「物差し」のサンプルを見て頂きたいという気持ちからなんです。
 
例えば、子どもが小さくて、自分にはお金も手間も掛けられない、子どもが散らかすのでインテリアにもこだわれない。でも、こんな工夫をしたら、少し心地よくなるかも。こんなアイテムなら、今の暮らしでも取り入れることができるかも。そんなふうに、自分で自分の暮らしを編集することの意欲を引き出すきっかけになることができたら。大げさな言い方かもしれませんが、社会全体を元気にすることにも貢献できるんじゃないか、そんな思いで取り組んでいます。
 
青木さん 「豊かさ」や「幸せ」の概念は人それぞれで、計ることができないものですよね。「みんなで幸せになろう」だと、何を以って「幸せ」とするのかが共有しにくいんです。でも「フィットする」というのは生理的な感覚であって、気持ちいい、気持ちよくないというふうに自覚がしやすい。
 
自分の生き方に対して「このやり方が自分に合っているな」「今の暮らし方は悪くないな」と思えることは素晴らしいことだし、そんなふうに自分の生き方を認められたら、物事にも寛容になると思うんです。そんな人が増えたら世の中が幸せになりますよね。
 
佐藤さん 「暮らしの編集」には終わりがなくて、その時々の自分にフィットするように続けていくことなんですよね。生きていれば歳も取るし、いろんなことがある。「今の自分はこうだけど、もうちょっとこうなりたいな」という希望を抱いていただけるような、そんなコンテンツを提供していきたいと思っています。