くらし談義

北欧のライフスタイルに教わった「フィットする暮らし」の心地よさ。<1/5>
青木耕平さん・佐藤友子さん 「北欧、暮らしの道具店」運営・株式会社クラシコム

食器、日用品、ファッション小物など、暮らしの道具を紹介している『北欧、暮らしの道具店』。日々を心地よく暮らすための提案が詰まったさまざまな読み物も人気のネットショップです。ショップを運営する株式会社クラシコムは、「全員18時退社残業なし」というワークスタイルを徹底しながら業績アップを続ける企業としても注目を集めています。今回はクラシコムの代表取締役・青木耕平さんと、『北欧、暮らしの道具店』の店長も務める同社取締役の佐藤友子さんに、「フィットする暮らしづくり」についてお話を伺ってきました。

PROFILE

青木耕平氏
1972年、東京都生まれ。株式会社クラシコム代表取締役。2006年、実妹である佐藤友子氏と株式会社クラシコム共同創業。単独、共同創業通算で、同社で3社目。07年、賃貸不動産のためのインターネットオークションサイトをリリースするが、1年ほどで撤退。07年秋より北欧雑貨専門のECサイト『北欧、暮らしの道具店』を開業。現在は北欧雑貨のEC事業のみならず、オリジナル商品開発販売、広告、出版(リトルプレス発行)事業など、多岐にわたるライフスタイル事業を展開中。
 
佐藤友子氏
1975年、神奈川県生まれ。株式会社クラシコム取締役。北欧雑貨をはじめとするライフスタイル提案ECサイト『北欧、暮らしの道具店』店長。オリジナル商品開発やブランド展開も手掛けるブランドマネージャーも兼務。サイト内では、暮らしにまつわるコラムも連載中。実兄である青木氏とともに事業展開を行っている。

ショップオープンのきっかけは、北欧のライフスタイルから受けた衝撃

―青木さんと佐藤さんはご兄妹だそうですが、お二人で『北欧、暮らしの道具店』を始めることになった経緯を教えてください。

青木さん
 2006年頃に行った、北欧への旅行がきっかけでした。当時の僕は不動産関係の事業を立ち上げ、佐藤にも手伝ってもらっていたのですが、それが全然うまくいかなかったんですね。ちなみに、不動産会社を介さずに、オーナーと入居希望者が直に交渉して賃貸物件を契約するという、『Airbnb』(※1)の賃貸版のような事業でした。今の時代ならもしかしたらうまくいったかもしれませんが、当時はまったくでした(笑)。
 
佐藤はそれ以前に一度、北欧へ旅したことがあり、かねてから「北欧は良かった」「もう一回行きたい」と話していたんです。それで、兄の起業の夢に付き合わせたことへのお詫びのつもりで北欧への旅行を企画しました。
 
でも僕も商売人なので、ただお金を使うだけの旅になるのは嫌だった。そうしたら佐藤が、北欧のビンテージ食器が日本で人気があると言うんですね。それだ!と思って、現地で食器を買い付けて国内で売ることを思い立ち、会社の口座に残っていた100万円ほどのお金と僕のクレジットカード全てを持って、北欧へ行ってきました。
 
佐藤さん でも、当時のほぼ全財産を費やして買ってきた食器たちは、日本に届いたら半分以上が割れていて…。買い付けたはいいものの、輸送のための梱包の仕方をよくわかっていなかったんですね。あの時は立ち直れないほど落ち込みました。
 
青木さん 割れずに残ったものをすべて売っても元が取れるかはわからない。でもせっかく買ってきたのだから、ちゃんと自分たちの財産になるような形で生かすことはできないかと考えました。さまざまなビジネスを研究していた僕は通信販売にも興味があったので、ネットショップを立ち上げて、そこで販売することにしたんです。
 
佐藤さん
 そうしたら、思いがけず反響があったんです。ショップのプレオープン段階からたくさんの問い合わせを頂いて、慌ててメールマガジンへの登録をご案内しました。そして後日、ショップの正式オープンをメールマガジンで通知したら、その日のうちにほとんどの商品が売れてしまったんです。
 
青木さん
 「北欧で買ってきた食器たちを売る」と決めた時点では何も考えていなかったんですが、当時は映画『かもめ食堂』が公開された頃で、北欧のものやライフスタイルへの国内の興味が高まってきていた頃。たまたまですが、タイミングがとても良かったんですね。


クラシコムの代表取締役である青木耕平さん(右)と取締役であり『北欧、暮らしの道具店』の店長も務める佐藤友子さん(左)。



―佐藤さんは1度目のご旅行の際から北欧に好印象をお持ちだったそうですが、北欧のどんなところに惹かれたのでしょうか?

佐藤さん 滞在中に、北欧の人々の暮らし方や働き方に触れる機会がいくつかありました。彼らは、まだ薄暗い朝の8時くらいから出勤して、17時には帰宅するんです。現地でできた友人の家に招かれた時には、夫婦で料理を作って振舞ってくれたり、食後はキャンドルを灯して一緒にお酒を飲んだり。浴室やトイレにまでキャンドルが灯っているんですよ。日本に居たら帰るどころかまだまだ会社にいる時間を、そんな風に過ごしているんです。
 
日本だったら「オシャレ」として肩肘張ってやるような日常の演出や過ごし方を、北欧ではみんなが普通に、自然体でやっている。家具もほとんどIKEAだったりするんですね。暮らしのディテールに気を配って、日常を少しでも豊かに暮らそうという姿勢が、当たり前のものなんですね。それまでの自分の価値観がひっくり返るような経験でした。同時に、彼らが当たり前にできることが日本ではできていないということに、悔しさも覚えました。
 
我が家には、最初の北欧旅行の際に買ったカップ&ソーサーがあるのですが、このカップ&ソーサーがこれからの暮らしをきっと変えてくれるだろう、と感じたんですね。北欧で感じたことを日常で思い出すためのシンボルになるだろうなと思って買ってきたんです。
 
北欧のものを売るということは、私に起こったことと同じようなことが、お客様のもとでも起きていくんじゃないかと思ったんですね。ただものを売るのではなく、私たちがお届けするものを通じて、北欧のライフスタイルへの共感を呼び起こすことができたら。彼らの日常をそのまま真似することはできないかもしれないけど、北欧のライフスタイルのエッセンスを日常に取り入れることはできるんじゃないか。そんな思いをお客様と共有したいという思いを抱きながら、『北欧、暮らしの道具店』を始めました。