豊かに暮らすひと

私らしい空間をイメージする。
DIYで住まいを豊かに<1/4>
坂田夏水さん Decor Interior Tokyo オーナー

代官山でインテリアマテリアルストア「Decor Interior Tokyo」を展開している株式会社 夏水組 代表取締役の坂田夏水さん。初心者でも気軽に始められるDIYのアイデア紹介や賃貸住宅でも取り入れやすいオリジナルのDIYグッズ販売など、DIYという方法を通じて「自分らしい豊かな空間をつくること」を提案しています。今回はそんな坂田さんに、DIYを無理なく暮らしに取り入れるアイデアや自分らしい空間づくりを楽しむヒントを聞きました。

PROFILE

坂田夏水(さかた・なつみ)
1980年福岡県生まれ。武蔵野美術大学建築学科卒業後、設計事務所と工務店勤務を経て、株式会社夏水組を設立。空間デザインやリノベーションのほか、オリジナルの塗料や壁紙、企業とコラボレーションした建具などの商品開発も行う。2013年、西荻窪の事務所の空きスペースを利用して自身が集めた建具や海外製ハードウェア、雑貨などを販売するショップ「GONGRI(ゴングリ)」をオープン。2016年に代官山に移転し、「Decor Interior Tokyo」としてリニューアル。『初めてでも失敗しない!リフォーム&インテリアアイデアBOOK』(KADOKAWA)『セルフリノベーションの教科書』(誠文堂新光社)などの著書を通じて、DIYのアイデアを発信している。

DIYなら始めやすい、自分らしい空間づくり
 
ー今日は坂田さんが運営するインテリアショップ「Decor Interior Tokyo」に伺いました。店内にはグラフィカルな輸入壁紙やニュアンスカラーの塗料、アンティーク風のフックなどが雑貨感覚で並んでいて、空間のイメージがふくらみます。

ここでは洋服やアクセサリーのように気軽にインテリアアイテムを選んで、暮らしを楽しむきっかけにしてほしいと思っています。壁紙や塗料、フックなどのパーツといったDIYグッズから照明やドア、床材なども扱っていて、例えば「この照明にはこの壁紙が合うな」など、空間をトータルでイメージできるようにしていますね。

DIYも気軽に始めてほしいから、例えば壁紙は幅52cmからの輸入壁紙をセレクトしています。国産壁紙は90cmと幅広なのでDIYで扱うのは少し難しいのですが、輸入壁紙なら一人でも十分貼れるんですよ。1m単位で切り売りしているので、いきなり壁に貼るのは抵抗がある方もパネルにして飾ったり家具に貼ったり、気軽に取り入れられます。

リーズナブルな価格にもこだわっていて、例えばフックやタオルハンガーは3,000円以下のものがほとんど。最近は芸能人が低予算DIYに挑戦するTV番組の影響などもあって、「工夫すればリーズナブルにリノベーションできる」ということが広く知られるようになりました。その番組では100円ショップのアイテムを駆使したりしていますが、ここではそのワンランク上で、でもそこまで高級ではないアイテムを揃えています。


代官山駅から徒歩3分の「Decor Interior Tokyo」。DIYに詳しいスタッフに相談しながら商品を選べる


ーオープンして3年。DIYに興味を持つ方は増えていますか?

前述のTV番組のようにメディアでDIYが取り上げられることが増えて、興味を持つ人は多くなっていますね。例えばうちの定番商品に、今の壁紙の上から貼れて後できれいに剥がせるドイツ製の壁紙専用糊があります。賃貸住宅でも気軽に使えるのがいいなと思って扱い始めたんですが、オープン当初は一部の情報通の人しか知らないような存在でした。ところが最近はテレビ番組や女性誌で紹介されるようになったおかげで、この製品を目当てに来てくださるお客様も増えています。
 
よく言われることですが、日本は衣食住の中で「住」に対する意識がすごく遅れています。「家の中より外側のファッションをきれいにしておけばいい」というように、大切にされてこなかったんですよね。確かに、インテリアにこだわらなくても生活すること自体は困らないじゃないですか(笑)。ヨーロッパに比べると、ホームパーティーなど家に人を招く習慣がないのも理由だと思います。
 
でもインスタグラムなどSNSでみんなが暮らしの背景を見せるようになって、生活に意識を向ける人が増えてきたなと感じます。誰でもSNSで海外のインテリアを見られるようになった影響もあるのかな。向こうでは一般的な家庭でも好きな壁紙やペイントを楽しむことが当たり前だから、「こういうこと、日本でもできるんじゃないの?」と思う人が増えてきたと思います。


草花や樹木がモチーフで人気のウィリアム・モリスの壁紙(中央列)は和室にも似合うそう。糊やローラーなど壁紙の施工道具も販売


ーヨーロッパと日本では、インテリアはもちろんDIYへの意識もかなり違うそうですね。

2010年のある調査では、自分で壁紙を貼った経験がある人の割合は東京が3.3%なのに対して、パリは60%弱。2人に1人が経験しているんです。ニューヨークとロンドンも30%を超えています。でも近年、日本の数値が10%程度になると業界では言われてきています。少しずつ状況は変わりつつありますね。
 
日本では住まいのメンテナンスは業者に頼むことが当たり前だったし、むしろまったくメンテナンスしない人も多かった。新築して数十年、まったく手を加えないまま解体を迎える家も多いですよね。でも住まいは、長く付き合っていく大切なもの。「子どもを育てるように」じゃないですが、時間をかけて手をかけることで自分らしい豊かな空間になっていくと思います。


海外で目にしたインテリアに発想を得たペイント、和室に合う壁紙などオリジナルのマテリアル開発も手がける坂田さん


ーそうしたことを考えるようになったのは、坂田さん自身の経験からですか?

学生時代にヨーロッパをバックパッカーで旅した時、現地でカルチャーショックを受けた経験が大きいですね。向こうでは住み手が自分でハウスメンテナンスをする文化があって、DIYは当たり前。知り合いの家でも気軽に壁紙を貼り替えているし、家族で街の建材屋さんやホームセンターを訪れて選ぶのも日常的な風景なんです。ホームセンターで売っているDIYパーツやマテリアルも、日本に比べてすごく種類が多いしセンスもいい。女性も楽しく選べるラインナップになっていて、それがすごくいいなと思って。
 
日本でもお父さんの日曜大工のような文化は成熟していたけど、一部の人のものでしかなかったというか。それを女性も楽しめるようになれば、住まいのあり方は変わっていくんじゃないかと思いました。
 
ー「Decor Interior Tokyo」で売っているのもクラシカルな柄ものの壁紙だったりアンティーク風パーツだったり、女性に人気が出そうなものが多いです。
 
日本でもDIYショップは増えていますが、女性が好きな世界観のショップはなかったな、と思って。私個人がこういうテイストが好きだから選んでいると思われがちなんですが、実際はちょっと違うんです。業界内での住み分けというか、戦略的なところが大きいですね。
 
実際、お客様の9割が女性です。代官山という土地柄、ウィンドーショッピング感覚で立ち寄ってくださる若い方もいますし、実際に住まいに取り入れたいとじっくり選んだり相談してくださる方も増えています。


店内のスタイリングコーナーにはペイントや壁紙と床材の組み合わせ方、各種DIYのアイデアが満載でイメージしやすい