くらし談義

有機的組織ロフトワークから学ぶ個人が活きる働き方<1/4>
林千晶さん 株式会社ロフトワーク共同創業者・代表取締役

2000年に株式会社ロフトワークを創業し、クリエイターをつなぐインターネットプラットフォームを構築した林千晶さん。現在は、Webデザイン・ビジネスデザイン・コミュニティデザイン・空間デザインなど、年間300件以上のプロジェクトを手がけ、クリエイティブの力で成功に導いています。さらに『株式会社飛騨の森でクマは踊る』では森林再生と地域産業の活性化に携わるなど、次々と社会的インパクトのある事業を展開しながらも、「自分が好きなことをしているのであまり仕事感覚がない」と話す林さんに、個人が活きる働き方、少し未来の仕事観についてお話を聞きました。

PROFILE

林千晶(はやし・ちあき)
株式会社ロフトワーク共同創業者・代表取締役。1971年生まれ、アラブ首長国連邦育ち。早稲田大学商学部、ボストン大学大学院ジャーナリズム学科卒。花王を経て、2000年に諏訪光洋氏と共にロフトワークを起業。世界のクリエイターの才能をビジネスとつなぐオンライン公募プラットフォーム『AWRD(アワード)』、国内外の10ヶ所で展開するデジタルものづくりカフェ『FabCafe』、素材に向き合うクリエイティブ・ラウンジ『MTRL(マテリアル)』などを運営。MITメディアラボ所長補佐、グッドデザイン賞審査委員、経済産業省産業構造審議会製造産業分科会委員も務めた。2017年に官民共同事業体『株式会社飛騨の森でクマは踊る』を岐阜県飛騨市に設立。『ウーマン・オブ・ザ・イヤー2017』(日経WOMAN)を受賞。

いつもオフィスに『働き方の実験』を
 
—今日は、ロフトワークの渋谷オフィスが入居しているビル10階のミーティングスペース『Loftwork COOOP10』でお話を聞いています。ミーティングスペースと言いつつ壁の仕切りが無いので、カフェのような開放感があって気持ちがいいですね。でも、隣のテーブルでは思う存分に会議が行われています。
 
ここ10階の『Loftwork COOOP10』は2011年にリノベーションをしました。ミーティングスペースにすることは決まっていましたが、スペースのコンセプトを考えたときに、『会議室に壁は要らない』ということになったんです。打ち合わせに来たお客さんがロフトワークの別の担当者と知り合いで会話が生まれるかもしれないし、別件で来たお客さん同士が友だちでお互いのプロジェクトで新たな発見があるかもしれない……。こんなふうにセレンディピティ(素敵な偶然)が起こるミーティングスペースをつくろうと思いました。
 

イベントスペースとしても使われる『Loftwork COOOP10』。パーティションは無く、移動しやすい椅子が置かれている
 

—会議室が足りないと、会議が重なる時間帯に『会議室予約合戦』が始まったりしますが(笑)、そもそも仕切りがないと、空いているスペースで打ち合わせができるので、実は機能的な会議室だと感じました。
 
私たちは、スペースが足りないからオフィスになる場所を探すということは無くて、大家さんから『今度○階が空くから、ロフトワークさん借りない?』と言われて借りるんです。いつもスペースに余裕がある状態で借りるので、『働き方の実験』ができます。
 

毎年のようにオフィス空間をリニューアルし続け、ロフトワークらしい『働き方改革』を模索し続けていると話す林さん
 

—ロフトワークなりの『働き方の実験』ですか?
 
この空間も、リノベーションした当時はミーティングルームに壁が無いなんてありえなかったけれど、実験で壁を無くしてみた。結果として、ミーティングをする部屋として定着しています。
 
10階『Loftwork COOOP10』から始まって、2012年に1階に『FabCafe Tokyo』をオープンして、2015年に2階に『FabCafe MTRL』、2017年に3階にプロジェクトスペース『Loftwork COOOP3』をつくり、2018年に8・9階の執務スペースをリノベーションしました。毎年のようにオフィスのどこかに手を入れていて、オフィスから新しい働き方の実験をしています。
 

人が集うカフェという空間に、レーザーカッターや3Dプリンター等、ものづくりマシンを設置した1Fの『FabCafe Tokyo』。様々なコミュニティが集うハブになっている。2階は創造拠点&コワーキング『FabCafe MTRL』
 
 
3ヶ月の打ち合わせを、3日で終わらせるスペース
 
—3階のプロジェクトスペース『Loftwork COOOP3(以下、COOOP3)』は、どのようなコンセプトでつくられたのですか?
 
3階『COOOP3』は、『3ヶ月の打ち合わせを3日で終わらせる』がコンセプトです。たとえば、一つのプロジェクトの定例会議を毎週2時間ずつ行うと、1ヶ月4週間として2×4=8時間、3ヶ月で24時間を定例会議に費やすわけです。でも、1日8時間×3日でも同じ24時間です。『どんな仕事を、誰に向けて、どんな価値をつくり上げるのか』という最初のプランニングフェーズは、3ヶ月かけて少しずつやるより、事業オーナー・企画職・デザイナーなど関係者が3日間一緒にいて一気に考えたほうが、確実に手応えのある道筋をつくり出せるという実感があります。
 
定例会議は、制作会社が下請けに発注して提案を出してもらい、定例会議で提案内容を確認し、次の1週間で指摘された部分を修正してくるという仕事の方法です。でも、事業オーナーも下請けも関係なく、違う業種の人たちが3日間一緒にいると、それは『つくる』という作業になります。受発注の関係ではなく、それぞれの得意分野を生かして、本当にそのメンバーじゃないとできないことを考える時間にするのが、プロジェクトスペースとしての『COOOP3』の役割です。
 

3階『LoftworkCOOOP3』。ホワイトボードを立てるための丸太が置かれており、ボードで個室を作れるようになっている
※写真 Gottingham