くらし談義

“場”がつなぐ、本・コト・ヒトとの出会い。<4/5>
内沼晋太郎さん numabooks代表

「本」にまつわることを中心に、多岐に渡るプロジェクトの企画・ディレクションを手掛ける内沼晋太郎さん。リビタが企画・プロデュース・運営するシェアスペース『BUKATSUDO』では、クリエイティブ・ディレクターとして参画。「本と人との出会いを作る」というコンセプトをベースに活動のフィールドを広げる内沼さんに、お仕事のこと、住まいのこと、そして“場づくり”について伺いました。

下北沢駅南口を出てマクドナルドがある角を左へ。ケーキ屋の横の路地を入ったところに『B&B』はある

そこに集い、行き交う人から刺激を受ける「シェア」の魅力

―以前のお住まいはシェアスペースとして活用なされるなど、パブリックな使い方をなされていましたが、現在のお住まいもそのような使い方をなされているのですか?
 
内沼さん 西尾久のアパートは完全に開かれていてほとんどプライバシーがない状態でしたが、それ以降はあくまでプライベートな家であって、時々友達を集めているくらいです。逆に働く場所はずっとシェア的なスペースでした。最初は『book pick orchestra』の在庫があった、先にお話しした西尾久のアパートですね。その後は『encounter.』をオープンしたので、横浜のみなとみらいにあった『北仲BRICK』が主な仕事場でした。大正時代に建築された古いビルで、建築家やアーティストなどが入居していました。ここは共用スペースのような場所はなかったのですが、入居者がクリエイターばかりという点で刺激を受けました。

その後に入居したのが、『co-lab三番町』(※現在はCLOSE)。さまざまな業種のクリエイターが入居するシェアスペースで、僕は現「greenz.jp」編集長の兼松佳宏くんと二人で、ブースをシェアして使っていました。当時ウェブデザイナーだった兼松くんが僕の隣で作っていたのが、最初の「greenz.jp」です。前述の本棚や『B&B』、『BUKATSUDO』のインテリアデザインを手掛けて頂いた「hiroyuki tanaka architects」も、当時『co-lab三番町』にオフィスを構えていた一組です。

『co-lab三番町』を出た後は、しばらく事務所を持たず、『六本木アカデミーヒルズ』の会員制ライブラリーを利用して仕事をしていました。無線LANや電源、コピー機などの利用が可能で、ライブラリーもある、コワーキングスペースですね。その後は『IID世田谷ものづくり学校』(以下、IID)の1室を借り、何社か入れ替わりで友人の事務所とシェアしながらオフィスとして使っていました。

―働く場所に「シェア」を選ばれてきた理由はなんですか?

内沼さん 
いろいろありますが、一番はそこに集まるいろんな人から刺激を得られることですね。『IID』には6年ほどオフィスを借りていたんですが、『IID』のオフィスは基本的に個室で、他の入居者と交流するのは、施設内にあるカフェやイベント開催時など。集中したい時は籠もることができ、周囲の入居者とほどよくコミュニケートできる距離感が気に入っていました。
 
リビタが展開する『シェアプレイス』もそうした考え方でつくられていますよね。そして、そんな場を「街」に持ってきたのが『BUKATSUDO』。僕のこれまでの住まい方や働き方、『B&B』でのイベント展開といった経験で得たものが、今回のディレクションに反映されていると思います。

本と人との出会いの場のように、住む場所も働く場所ももっと自由になっていく
 
―最近、オフィスをお引っ越しなされたそうですが、新しいオフィスはどのような空間なのですか?
 
内沼さん 
今回は普通のオフィスビルの1室を借りて、建築設計事務所「hiroyuki tanaka architects」と、グラフィックデザイン事務所「COMPOUND」、そして編集者の小林英治さんと、僕の『numabooks』とでシェアして使っています。今、オフィスにバーカウンターを作っています。
 
―バーカウンター!オフィスらしからぬ要素ですが、場の可能性が広がりそうですね。
 
内沼さん 
取引先の方と打合せをする場として、お迎えしてもてなす要素があったらどうだろうと考えたんです。僕らがホストで、打合せに訪れる取引先の方々はゲスト。普通の打合せスペースで話し合うのとは違うものが生まれるんじゃないか、という期待をしています。
 
―内沼さんご自身の今後の暮らし方の可能性についてはどうですか?
 
内沼さん 
地方に住むことを考えた時期もありましたが、今は現在の暮らし方に満足しています。でも、どう変化するかはわかりません。少し前までは、住まいは家族と一緒か一人暮らしかのどちらかで、仕事はフルタイムの会社勤めで、というのが世の中のスタンダードでしたが、今は少しずつ、住まい方も働き方も、多様なことが許容される時代になってきています。オンもオフもフルオープンにしてシェアしたい人、部分的にクローズドにしたい人、完全にプライベートにしたい人。地方に住む人、都会に住む人。その時その時の自分の働き方や住まい方に合わせて、場所やスタイルを編集できるような生き方が、当たり前になりそうですよね。


B&B』でビール片手に本を選ぶ。ほろ酔い気分が新しい本との出会いを導いてくれるかもしれない

 
interview_ 佐藤可奈子 photograph_ 古末拓也
取材・撮影:2014年8月