くらし談義

“場”がつなぐ、本・コト・ヒトとの出会い。<3/5>
内沼晋太郎さん numabooks代表

「本」にまつわることを中心に、多岐に渡るプロジェクトの企画・ディレクションを手掛ける内沼晋太郎さん。リビタが企画・プロデュース・運営するシェアスペース『BUKATSUDO』では、クリエイティブ・ディレクターとして参画。「本と人との出会いを作る」というコンセプトをベースに活動のフィールドを広げる内沼さんに、お仕事のこと、住まいのこと、そして“場づくり”について伺いました。

作家名やカテゴリーではなく、テーマごとに本が並べられた『B&B』の「文脈棚」。友達の家の本棚を見ているようで楽しい

友人がリノベーションしたアパートに住み、部屋の一部をシェアスペースに

―話ががらりと変わってしまうのですが、内沼さんのこれまでのお住まい遍歴を教えてください。
 
内沼さん 大学時代から新卒で入社した会社に勤めている間は、埼玉県内の実家に住んでいました。会社を辞めて仲間と『book pick orchestra』を立ち上げた頃、友人がニューヨークに留学することになり、彼が住んでいた荒川区西尾久にあるアパートに住み始めました。

そこは2階建ての古いアパートだったんですが、増築やリノベーションが繰り返されたあきらかに変な物件でした。50平米くらいあったので、僕はそのうちの1部屋に住み、ほかのスペースで古本の在庫を並べて、友人を泊めたり、打合せスペースとして貸し出したり、会費制のホームパーティーを行ったりしていました。パーティー時の残った食料を日々の糧に、貸出料やパーティーの会費を家賃の足しにしながら生活していました。
 
―アパートの広さや場の面白さを利用して、コンテンツを企画なされていたんですね。
 
内沼さん 「アパートを編集するモデル」というコンセプトで、その場に「modelroom」と名付けて、さまざまなイベントを企画して運用していました。そこに3年ほど暮らした後、恵比寿に引っ越しました。古いマンションの分譲賃貸で、オーナーがリノベーションをしていて、そこも面白い部屋でした。その後に住んだ中目黒の家は普通の1DKでしたが、部屋に人を集める癖がついていたので、その狭い部屋でもよく映画鑑賞会をしたり、誰かのお祝いをしたりしながら暮らしていました。その家はとても気に入っていて、4年ほど住んでいたのですが、2011年に西麻布に引っ越しました。


本と一緒に雑貨も販売。『B&B』にはさまざまなものごととの出会いが用意されている

「東京」のど真ん中に住んでみる

―どのような心境の変化があったのですか?

内沼さん 当時、千葉県の松戸駅周辺にクリエイターやアーティストを集め、共にまちづくりしていこうという『MAD Cityプロジェクト』が行っていた「脱東京ゼミ」のモデレーターを務めていたんです。地方に拠点を見出すクリエイターが増え始めていた頃でした。その後、あの震災が起こって、それまではごく一部の人の関心だった「脱東京」が、選択肢として、一気に広がりました。僕自身も「脱東京」に興味を持ち始めていましたが、実際に身の回りにも東京を離れる人が少しずつ増えてきたときに、ぼくはまだ今のところ東京にいられるし、いたいと思った。東京以外の場所に暮らすタイミングはいずれ来るかもしれない、だったら今は改めて「東京とは何か」を考えたいと思い、あえて東京のど真ん中っぽいところに住もうと思ったんです。
 
銀座や六本木などのエリアでも探しましたが、さすがに予算に見合う部屋はなかなかなくて、見つけたのは表参道と六本木の中間にある西麻布の部屋。未だバブルの匂いが残る街でした。
 
―内沼さんがプロデュースする『BIBLIOPHILIC』で販売中のオーダーラックは、この西麻布の部屋に住む際に作られたものだそうですね。
 
内沼さん BIBLIOPHILIC』は「本のある生活」を楽しむためのブランド。そんなブランドをプロデュースするのに、当時の中目黒の僕の家はIKEAの本棚に何段にも本を詰め込んでいつも溢れているような状態で、本の整理がまったくできておらず、すでに持っている本をまた買ってしまうような始末でした。まずは自分自身が「本がある素敵な生活」を体現しなければと思って、友人でその映画鑑賞会の常連でもあった田中裕之さん(hiroyuki tanaka architects)に依頼してデザインしてもらいました。
 
一番重視したのは、それぞれの棚のサイズ感です。本はサイズがバラバラですが、なるべくサイズ別ではなくテーマ別に並べて整理しやすく、かつ本を二段重ねにしてしまわないよう、余分な高さや奥行きをつくらないようにするために、ジャストなサイズ感を追及して作りました。棚板を支える縦の板が薄く本をずらりと並べることができたり、棚板の手前側に余裕を持たせて読みたい本をピックアップして立てかけて置けるようにしたり、奥行きの差となった部分をコーヒーやお酒を飲みながら本が読めるようにカウンターにするなど、本がある日常を楽しめるような本棚に仕上げました。

―現在はどのような家にお住まいなのですか?
 
内沼さん 
西麻布の部屋も気に入っていたのですが、その後『B&B』を始めて、店にこまめに顔を出せるようにしたいと考え、近くに部屋を借りて引っ越しました。西麻布の部屋で使っていた本棚が置ける長い壁面があることが条件だったので、希望エリアに当てはめると、条件に合う物件は2件しかありませんでした(笑)。最近は『B&B』や『BUKATSUDO』をはじめ、仕事で人の集まる場所を家の外につくることが多くなったので、ホームパーティ的なことには自然と手が回らなくなっていましたが、また久々にはじめたいですね。