くらし談義

「まちを面白がる」達人の楽して楽しむ生き方術<3/4>
唐品知浩さん ねぶくろシネマ実行委員長・オモシロガリスト

別荘・リゾートマンション専門ポータルサイト『別荘リゾートネット』での別荘地マーケティングを本業にしつつ、『YADOKARI小屋部部長』『ねぶくろシネマ実行委員長』『◯◯を面白がる会主催者』『いっぴんいち主催者』と合計5つの肩書きを持つ唐品知浩さん。肩書きを使いこなしながら様々な場所でコミュニティをつくり、街が活性化する活動をしている唐品さんは、汎用性のあるビジネスモデルを構築することで、多数の活動を持続可能なものにしています。今回は、ユニークなコミュニティ形成の方法やこれからの働き方について話を聞きました。

 
まちのコミュニティ活性を持続可能なビジネスにする

 
—唐品さんは、『ねぶくろシネマ』『いっぴんいち』『面白がる会』『YADOKARI小屋部』など、様々な活動をしています。その活動のモチベーションの源泉になっているのは何ですか? 月に何度もイベントを開催するのは、とっても大変だと思うんです。
 
僕が以前働いていた会社は、規模も大きいし給料も良かったので、そこからスピンアウトしたことによる不安があります。だから、仕事になりそうなものには手を伸ばす。自分たちが暮らしている調布で仕事の芽があって、それがまちや子どもたちのためになる可能性がある仕事なら、なおさらやっていこうという気持ちです。
 
—たしかに、プロジェクトの持続可能性を考えても、お金を稼ぐというのは必要な要素だと思います。ビジネスとして回していけるかどうか、どうやって見極めていますか?
 
課題があるところにビジネスがあります。個人的なものではなく多くの人の共通の課題であれば、その課題を浮き彫りにして解決したときにお金になる。課題が大きく社会的なものであるほど、収入は上がるだろうし、解決方法の汎用性も広がります。
 
もうひとつ気をつけているのは、ひとつのイベントにパワーをなるべくかけないようにすること。『ねぶくろシネマ』も『◯◯を面白がる会』も、一度フォーマットをつくってそれを横展開すれば実施できます。汎用性のあるフォーマットをつくって、僕のパワーをかけずに大きく横展開できるビジネスモデルかどうかを見極めています。
 
トリエ京王調布で行われた『ねぶくろシネマ』の様子。そのほとんどが企業協賛の映画上映。(photo by 七葉nanaha)
 
 
これからの働き方は、“楽であること”が大切
 

—いろんな肩書きを持って、自分の力が発揮できる居場所をたくさんつくっていく唐品さんの仕事のやり方は、これからの働き方のひとつのモデルケースになりそうです。
 

僕は不動産情報誌の出身で、そこが強みでもあって不動産業界の繋がりから仕事が広がっていきました。今はいろんな肩書きを持っていますが、僕がやっているのは基本的に不動産活用です。アウトプットが違うからいろんな仕事をしているように見られますが、やっているのは、ひとつの用途しかなかったところにもうひとつの用途を見つける不動産活用なんです。そして、それぞれの企画は繋がっていて、例えば『◯◯を面白がる会』の参加者が、次は『ねぶくろシネマ』のスポンサーになってくれたりする。
 
僕の働き方がこれからの働き方のひとつになるとしてアドバイスするなら、全然違う業界の仕事を複数やるのではなく、ひとつの軸を持ってそこから横展開していくと良いと思います。コミュニティをつくるプレイヤーが全く別の業界だと、営業先がバラバラで大変でしょう?
 
複数の企業と行政が管理する多摩川河川敷も、もっと「面白がる」ことができないかなと話す唐品さん
 
 
—街の活性化を促すコミュニティの形成は、ある意味この時代のトレンドで、それを仕事にしたい人はたくさんいると思うんです。そこには“熱い想い優先”といった風潮もあるなかで、唐品さんはとても冷静に合理的にものごとを見ているのが印象的です。

 
僕の仕事のやり方は、雑誌をつくっている感覚に近いかもしれません。リクルートで僕がやっていた雑誌は、上段にタイトルを入れて、次に価格と概要を入れるといったように、不動産を比較検討するフォーマットが決まっていました。そのフォーマットをエリア別にブロックにして、紙面にレイアウトしていく。今の仕事も運用のフォーマットは決まっていて、それを『ねぶくろシネマ』とか『◯◯を面白がる会』など企画というブロックで組み合わせていく。ただし、編集部が責任編集する巻頭特集はその時代に合ったものを考える。仕事で言うと、上映する映画の内容やアイデア出しをするテーマは僕を含め担当者が決めています。
 
—フォーマットに汎用性があるから、どんな場所にも企画を持っていけるし、テーマが違っても運用できる……。確かに省エネです。
 
いつも、“どうやって楽をするか”を考えています。家の近くにシェアオフィスを借りるのも、ひとつのパターンをつくってそれを横展開するのも、僕が楽をしたいから。そして、お金を稼ぐことは大切だから、仕事にできることは全部仕事にしたいと思っています。楽になった結果として余裕ができると、そこから新しい発想があってまた仕事につながるものが生まれる。そんなサイクルでやっていければ良いなと思っています。

 
                                                   interview_ 石川歩 photograph_ 古末拓也 edit_佐藤可奈子
取材・撮影:2017年11月