くらし談義

「まちを面白がる」達人の楽して楽しむ生き方術<2/4>
唐品知浩さん ねぶくろシネマ実行委員長・オモシロガリスト

別荘・リゾートマンション専門ポータルサイト『別荘リゾートネット』での別荘地マーケティングを本業にしつつ、『YADOKARI小屋部部長』『ねぶくろシネマ実行委員長』『◯◯を面白がる会主催者』『いっぴんいち主催者』と合計5つの肩書きを持つ唐品知浩さん。肩書きを使いこなしながら様々な場所でコミュニティをつくり、街が活性化する活動をしている唐品さんは、汎用性のあるビジネスモデルを構築することで、多数の活動を持続可能なものにしています。今回は、ユニークなコミュニティ形成の方法やこれからの働き方について話を聞きました。


ブレスト会議を、飲み会に置き換えてみたら……?
 
—唐品さんは、ひとつのテーマについて前向きなアイディアを出し合う“飲み会”『◯◯を面白がる会』の発起人もされています。すでに86回の『面白がる会』を開催されていて、“面白がる”ジャンルは多岐に渡っています。この会はどのように始まったのですか?
 

僕が15年間働いていたリクルートは飲み会が多くて、仕事が終わってみんなで飲みに行って、終電に飛び乗って帰るという生活をしていました。飲み会で話すのは仕事や好きな子の話で、それはそれで楽しいけれど、飲み会の時間に何も生み出していないことにモヤモヤしていました。もしも、毎回何かのアイデアが生まれる飲み会があったら面白いかも……と考えたところから、『◯◯を面白がる会』が始まりました。
 
シェアプレイス調布多摩川で行われた『多摩川を面白がる会』の様子。お酒やおつまみを持ち寄り“ゆるく”アイデア出しをする
 
 
—共通の話題があって、みんなの知識や経験が発揮される会話の掛け合いがあると、飲み会は盛り上がりますよね。
 
そうなんです。僕は、会話の中からアイデアが生まれる瞬間が好きなんです。会社やまちでよくやる“ブレスト会議”って、会議室にこもって、アイデアを書いた付箋をたくさん貼らされるでしょう?
 
—分かります! がんばって付箋にアイデアを書いても、たいして拾われない(笑)。その付箋はどこにいっちゃうの!? って思います。
 
ブレスト会議で良いアウトプットが出るかどうかは、会議をまとめる人の裁量によってしまうところがあって、僕はそれが嫌だった。それよりも、会話の中でアイデアが生まれたら良いと思うし、アイデアが生まれる瞬間って面白いんです。“こう考えて、こう捉えたから、このアイデアが出てきたんだ”と発想の過程が分かるのが面白くて、それは飲み会のネタになるし、ビジネスの発見でもある。いろんなテーマでアイデアを生み出すサイクルが回る飲み会が、『◯◯を面白がる会』になりました。
 
飲み会のテーマをひとつに絞って、そのテーマに関心がある人やプレイヤーが集まってアイデアを出し合うんです。“面白がらないといけない”から、自然と思考は前向きになります。僕たちがやっているのは“飲み会”なので、アイデアが形にならなくてもいいという気軽さがあって、闊達な意見が交わされます。それに、本当に良いアイデアは、1年後でも5年後でも、実行したくなるものです。
 
 
不動産もまちもPTAも「面白がる」から育つコミュニティ
 
—『◯◯を面白がる会』は、「日本橋」や「半蔵門」などのエリアを面白がるものから、「ボーリング場」「山主」「恋愛離れ」を面白がるものまで、テーマが多様です。今では、企業や行政のスポンサーが付いている『◯◯を面白がる会』もありますが、どのようにスケールアップしていったのですか?
 
僕はもともとリクルートで不動産情報誌の仕事をしていて、不動産業界の硬さを知っていたので、そこを柔らかくしてみようという試みで、『不動産を面白がる会』を何度かやりました。それが、最終的に『ニュー不動産展(※2)』というリアルイベントに昇華したんです。その後、自分が暮らしている『調布を面白がる会』をやっていたら、その噂を聞いた方から、『神田を面白がる会』をやらないかと誘われました。
 
—不動産と自分のまちを面白がっていたら、他のまちも面白がれないか、と誘われたんですね。
 
そうです。神田のある千代田区は、元から住んでいる住人と、近年建ち始めた高層マンションの住人の接点が無いという課題を抱えていました。300人で運営していた町内会に、一気に500人が暮らす高層マンションが建っても、なかなか相容れないものがあるというんです。そこで、『神田を面白がる会』をやってアイデアを出し合い、最終的に、会に参加していた地元の方が持っていた空き店舗をキッチン付きのイベントスペースにリノベーションして、地域に解放しました。そこが新旧住人の交流の場になったことで一定の成果を挙げて、そこからいろんな地域に声がけをもらうようになりました。
 
神田にある「the C」で行われた『神田を面白がる会』。ここから、新旧の神田住民が集う交流の場づくりが始まった
 
 
—『面白がる会』は、唐品さん発信のケースと、スポンサーが付いているケースがあります。どんなふうに分かれているのですか?
 
僕が発起して開催するものは、僕自身がこの業界はスタックしているからやってみようと思って始まることが多いです。例えば『PTAを面白がる会』は、僕の周りからPTAは課題が山積みだという話を聞いていて、ではみんなが行きたくなるPTAって何だろうと考えるところから始まりました。『◯◯を面白がる会』をやって課題だと感じたのは、横の繋がりがなくて他の学校がどういうPTA運営をしているか分からないこと。そこで、Facebookのグループをつくって、PTAに関する意見交換の場を設けました。今でもFacebook上で、全国のPTAに関する闊達な意見交換がされています。
 
スポンサーが付くのは、例えば『ショッピングモールを面白がる会』。ショッピングモールは今どこも物が売れなくて困っています。この会には、みんがよく知っている大手デベロッパーも小売業大手の人も来て、みんながひとつのテーブルでアイデアを出し合う。普段はライバル企業同士話し合う機会は無いけれど、『面白がる会』はただの飲み会だから集まって話せる。課題への共感度が高い参加者がアイデア出しをすると、盛り上がるんです。

 
  『◯◯を面白がる会』のアイデアや出会いは、『ねぶくろシネマ』や『いっぴんいち』にも繋がり、コミュニティが生まれる


—『◯◯を面白がる会』のフォーマットが出来ていて、そのフォーマットをどんな業界にも横展開していけるんですね。いろんな業界のアイデアを聞ける唐品さんが、一番楽しそうです!
 

僕は、会の最初に“面白がるとは何か?”を説明して、あとは出てくるアイデアを楽しく聞いている。様々な業界の方から良い刺激を受けられる、ナイスポジションにいます(笑)。会の開催に僕のパワーがかからないから、長く続けられているという側面もあります。
 
—“面白がる”って良い言葉ですね。自分ごととして主体的に楽しもうという思考になるし、その場が楽しいから“面白がりコミュニティ”みたいなポジティブな輪が広がっているように感じます。
 

※2 ニュー不動産展 2015年8月29・30日に渋谷ヒカリエで開催された、不動産を新しい切り口で捉えるメディア・サービス約30団体が一同に介したイベント。不動産はこうあるべきという固定概念にとらわれない新しい視点や目指す将来について、トークセッションが繰り広げられた。