くらし談義

誰もが「楽しくたくましく生きる」、そんな世の中をデザインする。<4/5>
東野唯史さん・東野華南子さん ReBuilding Center JAPAN

長野県諏訪市にある『ReBuilding Center JAPAN』。空間デザインユニットとして活動してきた東野唯史さん、華南子さん夫妻が2016年にオープンした建築建材のリサイクルショップです。役目を終えた古材や家具にもう一度光を当てることで、新しい文化の構築を目指すふたり。昨年には中古住宅を購入し、エコハウスへのリノベーションもスタートしています。自分らしく豊かな暮らしとは何なのか、現在進行形で考え続けるおふたりにお話を聞きました。



働き方もデザインして、世界を良くしていく

ーおふたりは空間をデザインするとき、いわゆる「デザイン」だけでなくそのお店のコンセプトや予算計画、全部ひっくるめてアドバイスしますね。それはどうしてですか?
 
華南子さん:特に私は「収支計画大丈夫?何人でお店回すの?1人じゃ大変よ!」だとか、どんどん口を挟むのが仕事です(笑)。「いつか結婚したくても子どもがほしくてもその収入じゃ無理だよ、やめたら?」ということまで言います。
 
自分たちがデザインしたお店で働く人が幸せじゃないのも嫌だし、そこにくるお客さんが不幸せなのも嫌なんです。働く人も、お客さんも地域も幸せを感じるお店をつくりたいと思うと、どうしたら長く働けるかはすごく大切なこと。お店は店主がほとんどの時間を過ごす場所になるから、そこをつくるということは人生を背負うようなものなんです。だから数年後に光が見えないようなプロジェクトに手は貸せないな、と思う。そういう話をすると、打ち合わせの段階で来なくなる人もいますね。


唯史さん:僕はずっと、大学時代に学んだ「デザインは世界を良くできる」という気持ちで仕事に取り組んでいて、お店の仕組みをつくるのもデザインの一つだと思っています。最近気をつけているのは、お客さんを喜ばせる前に、まず自分たちが幸せでないとダメだということ。自分で会社やお店をやって、無理して体を壊しながら働いた結果、「人のために頑張るだけじゃダメだ」と気づきました(笑)。
 
僕らにお店づくりを相談してくれる人たちのなかには、「Uターンして頑張って地元を元気にしたい」とか「ゲストハウスをつくってみんなを喜ばせたい」という人がいて、彼らは最初の収支計画で自分の給料を10万円で設定していたりする。それで本当に食べていける?続けていける?と聞くようにしています。例えばゲストハウスならベッド数を増やすか単価を上げるかすればもっと収入は増やせる。そういう提案を、僕らからできるから。

誰でも「楽しくたくましく」生きられる世の中へ
 

レスキューしてきた古材をメンテナンスするスタッフたち。
 

ー空間デザインや古材販売、カフェと、いろいろなフィールドで仕事をしているおふたりですが、どんなときに喜びを感じますか?
 
華南子さん:リビセンのスタッフの子がのびのびし始めたな、と思ったときですね。私は就職活動をしていたときから「週5日の仕事を我慢してこなして、アフター5や週末だけ楽しむなんて効率悪すぎる!」と思ってきたから。ここでの時間が彼らの生活を豊かにしているような気がしたときは、すごくうれしいです。
 
唯史さん:僕は、いわゆる「ちゃんとした会社」や「ちゃんとした人」からリビセンを評価されて、一緒に何かやろうという話がきたとき。僕らの考えが少しずつでも世間に浸透してきている気がして、うれしいです。
 
今進んでいるプロジェクトの一つはある電鉄会社さんとの企画で、解体される駅舎の木材をレスキューしてスツールをつくるワークショップをします。それから、長野県内のスターバックスコーヒー全店に県産材の古材で僕らがつくった木箱を置いて古本を集めて、売上を寄付するプロジェクトも始まっています。期待された役割を担えるように、相手もリビセンをいい意味で利用できるように、僕らがブレずに存在することが大事だと思っています。



ーリビセンの活動はすごく社会的意義があるし、エコハウスリノベーションもこれからの住宅を変えていく予感がします。おふたりはどんな社会を目指していますか?
 
唯史さん:楽しくたくましく生きられる社会、かな。
 
華南子さん:そう。ポートランドの『ReBuilding Center』に行ったとき、80歳ぐらいのおばあちゃんが3mぐらいある古材をひょいっと売り場から持ってきて自分のトラックに積んで、「じゃあね!」って帰って行ったんです。スタッフはそれを見て「頑張って!」と声をかけるだけで、手伝わない。
 
おばあちゃんが「何かつくろう」と古材を買って帰る光景もすごく衝撃的だったし、私ならつい手伝いたくなってしまうけど、スタッフはおばあちゃんが自分でやる姿を応援するんですね。運んであげればそのときは楽かもしれないけど、家に着いたら結局は自分で降ろさないといけないでしょう。「ReBuilding Centerは自分でやることを応援する」という姿勢が感じられました。ああいうことがやりたい、と思ったんです。
 
私たちもお客さんにいろいろやってあげたくなるけれど、そうじゃなく「自分たちの力で何かできる」という心強さを誰もが持てる世の中、そういうものに貢献できたらいい。例えば「いい器を買いたい」と思っても、もし割れたらもったいない、と迷いますよね。けれど「自分で直せるから割れても大丈夫」と思えたら、本当にほしいと思うもの、価値があるものにお金を払えるようになっていく。リビセンが、そういうたくましさや心強さが芽生えるきっかけになれたらいいと思います。
 
interview_石井妙子  photograph_ 金井真一、一部写真提供_ ReBuilding Center JAPAN
取材・撮影:2018年6月