くらし談義

誰もが「楽しくたくましく生きる」、そんな世の中をデザインする。<2/5>
東野唯史さん・東野華南子さん ReBuilding Center JAPAN

長野県諏訪市にある『ReBuilding Center JAPAN』。空間デザインユニットとして活動してきた東野唯史さん、華南子さん夫妻が2016年にオープンした建築建材のリサイクルショップです。役目を終えた古材や家具にもう一度光を当てることで、新しい文化の構築を目指すふたり。昨年には中古住宅を購入し、エコハウスへのリノベーションもスタートしています。自分らしく豊かな暮らしとは何なのか、現在進行形で考え続けるおふたりにお話を聞きました。


購入した中古住宅はリビセンから車で10分ほど。窓の外は見渡す限り田んぼが広がっています

古くても快適で、かっこいい家をつくりたい
 
ーリビセンは昨年、築50年の中古住宅を購入してリノベーションを進めています。今年の冬に完成予定で、東野さん夫妻の住まいになるそうですね。これまでおふたりがデザインした空間はほぼ100%店舗でしたが、住まいをつくろうと思ったのはどうしてですか?
 
唯史さん:僕らが日々レスキューする古材は板材が多くて、住宅一軒あたり500kgぐらいの量しかレスキューできていないんです。でも木造住宅を一軒解体すれば、約17tの材料が出る。全部バラしてレスキューするよりも、丸ごとリノベーションして活用する方が救える量は多いんですよ。
 
ただ下手なリノベーションで快適に過ごせない家になっても良くないし、「リビセンの理念に合ったリノベーション提案ができないだろうか」と考えるようになったんです。それができれば、レスキュー総量も増えることになりますから。
 
ー「快適に過ごせる家」とは、冬暖かくて夏涼しい、ということ?
 
唯史さん
:そうです。去年の秋に華南子が過労で倒れて入院してしまったことも、暮らしを見直すきっかけになりました。諏訪は真冬の平均気温が氷点下になるぐらい寒いんですが、それまで僕らが住んでいた古い家は全然快適じゃなかった。華南子が倒れたことで「ああ、しんどかったんだ」と気づいたんです。そこから築2年の集合住宅に引っ越したら、暖かさという意味ではすごく快適になりました。
 
華南子さん:古い家もいいけれど、豊かな暮らしとイコールではないと分かって、理想の暮らしと快適な暮らしのちょうどいいバランスを探りたいと思うようになったんです。



唯史さん:そんなときに「暮らしかた冒険家」の伊藤菜衣子さんが札幌でエコハウスのリノベーションを始めたのを知って気になって、住宅の断熱や気密について勉強を始めました。実際に山形や岩手県紫波町のエコハウスに泊まりに行って、「これはすごくいい」と感動した経験も大きかったです。外は気温マイナス4度の日に、室内はロンT一枚で快適に過ごせたんですよ。例えるなら、真冬なのに室内はGW明けの気持ち良い季節、という感じ。窓の近くも寒くなくて、全体に温度ムラが少ない。特に廊下やトイレでそのすごさを実感しました。
 
リノベーションで新築住宅と同等かそれ以上の断熱性能の家を新築と同等の値段でつくれるようになれば、親やその上の代から暮らしていた住宅を住み継ぎながら、今の価値観に合わせて暮らしていけるんじゃないかと感じました。しかも、デザインもかっこ良く。


 
ーこれまでのリノベーションはデザイン優先にすると快適性は二の次、というイメージがあります。地方では特に空き家問題は深刻だし、高性能でデザインもいい住宅ができることを示せれば興味を持つ人は多そうですね。
 

唯史さん:新しいことは、まず自分でつくらなければ広まらないと思うんです。この家ができたら興味がある人を招いてホームパーティーをしてもいいし、泊まってもらってもいい。体感してもらうなかで「自分たちもエコハウスをつくりたい」という人が現れたらデザインは僕らができるし、実施設計や施工は、地元の信頼できる工務店にお願いする予定です。
 

広い庭で念願の菜園も始めたそう。この日はルッコラを初収穫!
 
華南子さん:エコハウス分野では「みかんぐみ」の竹内昌義さんや「暮らしかた冒険家」の伊藤菜衣子さんが先頭を走ってくれているから、私たちの役割は「エコハウスってこういうことだよ」と分かりやすく伝えることだと思っています。ミッキーマウスとミニーマウスみたいに(笑)。
 
私、大学は普通の文学部だったんですよ。古材や断熱なんて全然興味がなかったし、まわりの友達もそう。そういう意味で自分は「一般人」だと思っています。自分と同じ感覚の人に「かっこいいし性能もいいこんな家ができるんだよ、普通なら捨てられる古材がこんな風に使えるんだよ」ということをどうすれば伝えられるかは考えていきたい。
 
この家は、オープンハウスもたくさん開催する予定です。解体中の中途半端な状態も見てもらいたい。家の骨組みはどうなっているのか、断熱材がどうやって入ってるかなんて普通の人は知らないし、見てみたいですよね。そうやって少しずつ、「自分ごと」にしてもらえるといいなと思います。