くらし談義

子どもと大人が共につくる、豊かなまちのかたち<2/5>
松本理寿輝さん ナチュラルスマイルジャパン株式会社代表取締役

活動内容を子どもたちが話し合って決める。地域の人の溜まり場になるカフェやコミュニティガーデンが併設している。子どもと保護者と地域をつなぐ『コミュニティコーディネーター』がいる。そんな、これまでにない形の保育園が注目を集めています。保育の場を家庭や保育園から「まち」へと広げるその試みは地域に交流を生み、保育園がまちづくりのひとつの拠点になりつつあります。保育園の運営を通じて豊かな社会づくりに取り組む『まちの保育園・まちのこども園』代表の松本理寿輝さんに、話を聞きました。

子どもを「社会の一員」として見る

—2011年、『まちの保育園 小竹向原』を開園しました。『まちの保育園』という名前の由来を教えてください。

これからの保育園のかたちを考えたときに、子どもの存在を社会的に認めて、まちぐるみで子育てをすることが必要だと思いました。子どもも大人も共に育つ豊かな地域を作りたいという理念を、そのまま園の名前にしています。

『まち』と平仮名にしたのは、子どもにも受け入れやすいのと、漢字にするといろんな意味が出てくるからです。村は? 里は? と考えたときに、含みのある『まち』という平仮名にして、多様なコミュニティを包括できるネーミングにしました。保育園を、地域みんなのものにしたいという想いを込めています。

—『まちの保育園』は建物がモダンなことも特徴的です。レンガや木などの自然に近い素材がふんだんに使われ、色味もシックで、大人が見ても上質な空間だと感じます。

地域と保育園の境目をなくすためには、保育園の空間は子どもだけでなく、大人にも心地いい場所にしたほうが良いと考えたんです。また、新築時に一番価値が高い建物ではなく、まちぐるみでその場所を育てて徐々に経年変化が味になっていく建物にしたかったので、建物にはできる限り自然素材を使うようにしました。


小竹向原園。地域に対して開かれた園にするため、ガラスを多用している


—よくある動物のイラストなどを外観に使っていないことも、そうした意図からなのですね。

「保育園はこうあるべき」という既成概念に捉われないようには気を付けていますが、昔から受け継がれてきた保育園の形を変えてやろうと考えているわけではありません。僕たちのようなやり方も共存できるのではないか、と思いながらやっています。

例えば、子どもの作った作品を部屋に展示すれば、「僕たちは、あなたがつくった作品を素敵だと思っているよ」「あなたたちの作品によって、この場所は成り立っているんだよ」と伝えられます。そういう場所は、十分に子どもたちにフレンドリーな空間になると考えています。子どもは自分の作ったものにとても意味を持つので、大人がそれを大切にすることで自己肯定につながるし、他の作品を見ることで子どもたちなりの新しい発見も生まれます。

小竹向原園の『ギャラリー』。子どもたちの作品以外に、地域の人との取り組みを展示することもある園と地域の中間領域


—「子どもこそ本物がわかる」という前提で、大人と同じように子どもに接しているのですね。

そうですね。いくつかの色しか使っていない概念化しすぎているイラストを見せるよりも、もっと複雑なものを見せても子どもは理解すると思っています。

子どもが本物を理解している話の例として、子どもが交響曲を聴いて、曲の終わりに拍手をするという習慣ができたとします。その子どもは、初めて聴いた曲でも曲が終わった瞬間に拍手をするんです。クラシックの音楽性を理解している子もいるんですね。子どもはみんな、それぞれ個有の感性を持って生まれてきているんです。ちょっとした違いが分かることが感性と言われるけれど、子どもたちは日々、その違いを感じ取りながら育っています。

子どもの可能性を面白がって、もっと大切にしていくことの必要性を知ってほしいし、僕にとっては子どもの可能性を見るのが保育園経営の一番の面白さで、だからこの仕事を辞められないんです。

取材時に飾られていたのは、近所の画家からプレゼントされたイラストと、子どもたちがダンボールでつくった作品