豊かに暮らすひと

仕事も住まいもまちも、“自分事”にして暮らしを楽しむ。<4/5>
ナカムラ ケンタさん 「日本仕事百貨」運営・株式会社シゴトヒト代表取締役

“生きるように働く人の求人サイト”「日本仕事百貨」を運営する、株式会社シゴトヒトのナカムラケンタさん。「働くことは、生きること」「暮らすことも、生きること」と、働くことと暮らすことを「生きる」という一本につながった物語だと考える中村さんに、ご自身の暮らしと住まいのこと、そして生きるための“場づくり”への想いを伺いました。

― 「リトルトーキョー」のノウハウを、世の中とシェアするということですね。
 
ナカムラさん これまでいろんな仕事を見てきて、僕が共感するスタンスのひとつに、「贈りものをするように働く」というのがあるんです。たとえばカメラマンなら、編集者が「こういう写真を撮って」と言うけど、企画を聞くと、「こんな写真もいいんじゃないか」と思うとします。それで、リクエストされていないけど、そういう写真も撮っておく。それは、贈りものをするような働き方だなと思って。すると、「こちらがほしいものを理解してくれているから」と、全部任せてくれたり、企画から参加してほしいという話に発展したりする。そんな働き方は、お互いが贈りものをし合うような、いい関係性を生むことにつながると思うんです。
 
そういったスタンスは、暮らしにも必要だと思うんです。日本在住のイギリス人である友人は、早い時間にゴミ出しをするので、ネットを出して掛けておく。車に轢かれた猫の死骸があれば、道路に水を撒き、死骸を役所の人に引き取ってもらう。誰に強制されたわけでもないけど、誰かがやるべきことだからとやっていたら、地域の人との良好な関係性ができあがっていたんですね。もしも、そういった手間の部分が、税金でまかなう行政のサービスとしてお膳立てされていたら、そんな関係性は生まれない。暮らしのさまざまなことがお金でまかなえてしまう時代だけど、それだけでは、大切な何かを失ってしまう可能性もあると思うんです。
 
シェア型賃貸住宅にしても、自分専用のシャワーやキッチンがあるにこしたことはなくて、ある側面から見れば非合理なんだけれど、そうした部分が、本質的な幸せを生むことにつながる気がするんです。ひと昔前まで、シェア生活は家賃を安く済ませるための手段でしかなかったものが、今ではシェアすることにこそ価値があるという考え方に変わってきている。それはとても素晴らしいことだと思うし、そういう暮らし方がまち単位で広がったら、まちはもっと豊かになると思います。「リトルトーキョー」は、そんなまちにしていきたいですね。

中村健太さん08
東京・虎ノ門にある空き地と左隣の木造建築が「リトルトーキョー」プロジェクトの拠点。取材時点ではリノベーションが進行中だった。

リノベーションは、自分自身の既成概念を壊して、可能性を切り開くことができる方法
 
― 最後に、「リノベーション」という“場づくり”の方法については、どのように思われますか?
 
ナカムラさん リノベーションは、とてもいいと思います!いや、リビタからのインタビューだからというわけではなくて(笑)。僕自身、リノベーションをやった身ですしね。普通、新築で何かをつくるときは、いろんなプロに関わってもらわないといけない。でも、リノベーションは、改装の程度にもよりますが、その気になればひとりでもできる。多数決をとって、みんなが納得する平均値をとるやり方もありますが、何もないところからつくっていく新築と違い、リノベーションは対象となるものがすでにそこにあるので、ひとりのアイデアをそこにぶつけていける。多数決の結果では生まれ得ない、面白いものができ上がる可能性がありますよね。
 
あとは、法律の規制緩和がされて、建物の用途変更が容易にできる地域が出てきたりしたら、オフィスビルなどの空き物件が住居やカフェに変わり、古い街並を活かしながら新しいソフトが挿入されていくようになって、面白いまちづくりができるようになるんじゃないかと思っています。
 
「◯◯はこういうもの」という風に、既成概念に捉われている人にこそ、リノベーションにトライしてもらいたいですね。リノベーションは、「自分ならこうする」を、想像しやすい。自分の既成概念を壊すきっかけにしやすいと思うんです。そして、家づくりそのものに自分が参加しやすい。住む人が主体的になって家づくりできるのがリノベーション。みんな、暮らすことは“自分事”だけれど、仕事や住まいのことは、“自分事”だという感覚がちょっと乏しい。リノベーションは、住まいを“自分事”にできる、とてもいい方法。“生きるように働く”ために、働く場がどんなところであるかが大切なように、“生きるようにくらす”ための住む場に何を選ぶのかということも、とても大事なことだと思います。


※1「シェアプレイス」  リビタが運営する新しいスタイルのシェア型賃貸住宅。
 
※2「東京R不動産」 新しい視点で不動産を発見し、紹介していくセレクトショップ的不動産メディア。
 
※3「グリーンズ」 “ほしい未来”を共有するためのウェブマガジン「greenz.jp」を運営するNPO法人。

 
interview_ 佐藤可奈子 photograph_ 古末拓也
取材・撮影:2013年7月