豊かに暮らすひと

仕事も住まいもまちも、“自分事”にして暮らしを楽しむ。<3/5>
ナカムラ ケンタさん 「日本仕事百貨」運営・株式会社シゴトヒト代表取締役

“生きるように働く人の求人サイト”「日本仕事百貨」を運営する、株式会社シゴトヒトのナカムラケンタさん。「働くことは、生きること」「暮らすことも、生きること」と、働くことと暮らすことを「生きる」という一本につながった物語だと考える中村さんに、ご自身の暮らしと住まいのこと、そして生きるための“場づくり”への想いを伺いました。

ナカムラさん ヒントになったのは、ドイツのミュンヘンで行われている「ミニ・ミュンヘン」というプロジェクトでした。それは、夏の三週間、子どもたちによってまちをつくるというもので、まちそのものを子どもたちで構想して、まちがオープンしたら、子どもたちはそのまちのハローワークのようなところに行って仕事をもらう。気に入った仕事がなければ、自分で仕事をつくってもいい。立ち漕ぎ自転車でタクシーをやったり、モデルをやったり、家を建てる大工になったり。そのまちには仮想通貨が流通していて、市長選挙もある。生活も経済も政治もある、もう本当の「まち」なんですよ。僕はまだ、実際にそれを見に行ったことはないのですが、大阪で「ミニ★大阪」という同じようなイベントが行われていて、それを通じて、「ミニ・ミュンヘン」を知りました。子どもたちがしていることはどう見ても完全に仕事なんだけど、彼らは本当に楽しそうに遊んでいるんですよ。
 
現実世界の仕事は、「面白そう!」だけではやれないことも多いですよね。「リトルトーキョー」のキャッチコピーは、“もうひとつの肩書きが持てるまち”ですが、その通り、現実の仕事とは別に、このまちのなかでもうひとつの仕事をしてみようというものです。たとえば、グリーンズのメンバーは、落語家や靴磨き職人をやってみたいと話しているし、僕はバーテンダーや、「リトルトーキョー」の市長に立候補することも考えています。現実世界ではないので、何でもあり。制約がない状況の中で、純粋に“やりたいこと”にトライできるんです。
 
「リトルトーキョー」の中でのオルタナティブな活動履歴が、その人のもうひとつの履歴書になって、現実社会の仕事選びや就職につながったり、現実社会の仕事で新たなプロジェクトを始めることになったり、独立して起業することになったりするかもしれない。遊ぶように仮想都市で働く結果、現実世界の仕事や人とのつながりにも、良い影響を与えることになっていったら…と考えています。
 
「リトルトーキョー」にある物販のショップ、バー、ギャラリーや、日ごとに行うトークイベントには、市民以外の人も訪れることができて、市民を辞めた人も、その後も遊びに来てもらえるような場にしていきたいと思っています。もうひとつの“地元”を東京に持つような、そんなコミュニティの場にしてきたい。

中村健太さん06
 
― オフィスづくりの話からまちづくりに発展するなんて、面白いですね。
  「リトルトーキョー」の中に設けるナカムラさんのオフィスは、どんな空間になる予定なのですか?

 
ナカムラさん いろんな人が訪れてくれる、開かれたオフィスを計画中です。大きなテーブルをひとつ置いて、作業や打合せのほかワークショップもできる、フレキシブルなオープンスペースを設けようと考えています。あとは、スタッフそれぞれの固定デスクを置いたスペースも設けたい。みんなとおしゃべりしながら仕事ができる開かれた場所と、集中して仕事ができる閉じた場所、両方備えたオフィスがいい。それらを、自由に選択して働ける場所にしたいんです。僕らのオフィスには仮眠用のソファを必ず置いているのですが、「寝たいときには寝れる」という状況ができていることが、実際に寝るか寝ないかは別にして、精神的なゆとりになるんです(笑)。
 
“シェア”することで豊かさが広がる生き方を、「リトルトーキョー」でやってみたい
 
― さまざまな「働き方」の可能性を提示する活動をされているナカムラさんですが、ご自身の住まい方の可能性については、どうですか?今後、こういう暮らしをしてみたいといったビジョンはありますか?
 
ナカムラさん 「リトルトーキョー」に住むのも面白いかもと思っています。僕は仕事と暮らしを切り分けて考えていないので、職住接近の暮らし方もありだなと思っています。職場が近いと休みにくそう…ということも、僕はやるべき仕事をやれていれば、オフも積極的に楽しむべきだと考えているので、自分が休みでスタッフは仕事でも気になりませんし、スタッフにもそういう働き方を促しています。
 
「リトルトーキョー」周辺には、空き地や空き物件がいくつかあって、今後はそうした場所も借りて、住居やドミトリーにしたり、劇場をつくりたいとも考えています。特に住居はやってみたいことで、自分が住む以外にも、住み手によるリノベーションOKの賃貸住居をやってみたい。住み手にデザイン案を提出してもらい、内容が良いならリノベーションしてもらって。退去時には、次の入居者が現状の内装でOKなら原状回復しなくてもいいとかね。柔軟な仕組みをつくって実現できたらと考えています。
 
こういった「リトルトーキョー」での試みをオープンに公開していくことで、土着的でローカルなコミュニティが育つ「リトル◯◯」が、世の中にたくさん増えていったら、人の暮らしも、地域も変わっていくんじゃないかと期待しています。同じように空室化が進んでいる地域は、日本にたくさんありますよね。地域の在り方のひとつの形として、「リトルトーキョー」がその好例になったら…と思っています。