くらし談義

仕事も住まいもまちも、“自分事”にして暮らしを楽しむ。<1/5>
ナカムラケンタさん 「日本仕事百貨」運営・株式会社シゴトヒト代表取締役

“生きるように働く人の求人サイト”「日本仕事百貨」を運営する、株式会社シゴトヒトのナカムラケンタさん。 「働くことは、生きること」「暮らすことも、生きること」と、 働くことと暮らすことを「生きる」という一本につながった物語だと考える中村さんに、 ご自身の暮らしと住まいのこと、そして生きるための“場づくり”への想いを伺いました。

PROFILE

1979年、東京都生まれ。明治大学建築学科卒。不動産会社に入社し、商業施設などの企画運営に携わる。居心地のいい場所には「人」が欠かせないと気付き、退職後の2008年、“生きるように働く人の求人サイト”「東京仕事百貨」を立ち上げる。2009年、株式会社シゴトヒトを設立。2012年、サイト名を「日本仕事百貨」に変更。ウェブマガジン「greenz.jp」を運営するNPO法人グリーンズとともに取り組む、“もうひとつの肩書きが持てるまち”「リトルトーキョー」が2013年7月オープン。
「日本仕事百貨」
「リトルトーキョー」

「居心地のいい場をつくるのは人」という気づきから始めた、「日本仕事百貨」
 
― ナカムラさんが運営している「日本仕事百貨」とは、どんな求人サイトなのですか?
 
ナカムラさん 「生きるように働く」人のための求人サイトです。「生きるように働く」というのは、働くことは、生きることにつながっていますよね。仕事とプライベートを割り切る考え方もありますが、休日の経験も仕事とつながっているものと考えて生きること、仕事も暮らしも自分の一部として扱う考え方もある。「日本仕事百貨」はそんな、仕事も“自分事”として考えて働きたい人のための求人情報を紹介するサイトです。勤務地や給与、福利厚生の条件も仕事選びには大切な要素ですが、それだけでは、そこでどんな風に働くことができるのかはわかりません。なので、その職場で働いている人への、仕事の内容や、辛いこと、楽しいこと、仕事への想いなどを聞いたインタビューを添えて、求人情報を掲載しています。
 
― 大学で建築を学び、不動産会社に勤め、その後「日本仕事百貨」を始めるまでの経緯を聞かせてください。
 
ナカムラさん 僕の両親は転勤族で、僕にはいわゆる“地元”がないんです。実家はありますが、その周辺に幼なじみが住んでいるわけではないし、懐かしいお店があるわけでもない。そうした経験から、自分の居場所をつくりたい、“場づくり”がしたいという気持ちを抱くようになり、大学では建築学科に入りました。
 
大学で建築を学ぶことはとても楽しかったのですが、段々と現実的な諸条件が設定された課題になるにつれ、建築をつくる立場は受け身である実情を知り、ならば建築を発注する側になろうと考え、不動産会社に就職しました。そこでは、不動産活用や開発などの仕事を担当して、とてもエキサイティングだったのですが、稼働率や採算性ありきではない、“場づくり”の在り方はないのか?と考え始めたんです。
 
その頃から僕は中目黒に住んでいるのですが、今でも毎日のように通うバーが近所にあって、なぜこんなにもこのバーに通うんだろうと考えたんです。食事もお酒も美味しい、空間も心地がいい。それらを提供しているのは、お店の人。場をつくるのは、結局、人なんだと悟ったんです。お店の人が生き生きと働いて、いい仕事をしているから、いいお客さんが集まって、いい場になる。そんな循環が生まれる“場づくり”がしたいと思い、そのためには、いい働き方ができる場所で働くことが大切だと考え、「日本仕事百貨」を始めました。
 
中村健太さん02

木造一軒家でのシェア生活。友人と3人で臨んだ、セルフリノベーションによる“場づくり”
 
― 「日本仕事百貨」を始めるきっかけとなったバーがある中目黒には、
  10年以上お住まいだとか。どんな家にお住まいになられてきたんですか?

 
ナカムラさん 最初は大学時代の友人と3人で、木造一軒家を借りてシェア生活をしていました。ほかの2人がもともとシェア生活をしていて、そこに誘われたのがきっかけ。でもそのときの彼らの住まいは僕の勤務先からは遠かったので、通いやすい場所で新たに物件を探すことになったんです。僕らは3人とも建築学科出身でしたし、できれば自分たちで改装できる物件に住みたいと思っていました。ですが、当時は今ほどシェアが浸透していなかったし、「シェアしたい」「自分たちで改装したい」という希望を伝えても、不動産屋は「は?」といった感じで、門前払いされ続けました(笑)。そんな中、中目黒で築50年ほどの一軒家を見つけたんです。
 
その家は、長らく空き家だった様子で、「これは、オーナーに直談判すれば可能性がある!」と思って、オーナーに会わせてもらったんです。「僕らは全員、建築学科出身です。オーナーの投資なしに、僕らで良い空間にリノベーションします。僕らがこの家をバリューアップする分、家賃を安くしてください!」と交渉したら、運良くOKが出た(笑)。オーナーも、この物件をどうすべきか悩んでいた時期だったのが幸いしたようです。
 
その後は、土壁を壊し、床、壁、天井を板張りにしてオイルステインを塗り、落ち着きある内装に変えました。天井もはがして、梁が見えるようにしました。水周りは、改装案をオーナーに提示して、「僕らでならここまでできるけど、業者に依頼すればここまでできます」と交渉して、そこはオーナー負担で改装してもらいました。