料理家夫妻とこだわりキッチン|お宅拝見

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料理家夫妻とこだわりキッチン

目 次
  1. 1何も手を抜かずLDKに予算を集中。人を迎える場としてのこだわり
  2. 2主役のキッチン、ゲストの目に触れる棚や壁は、すべて家具職人による造作
  3. 3チャンスが向こうからやってくる家。場所があるからアイデアをすぐに形にできる

平日は会社員として働きながら、休日には自宅で料理教室や予約制の食事会を開く「てとてと」というユニットとして活動しているIさんご夫妻。活動の舞台として中古マンションをリノベーションして、広々としたキッチンを中心とした住まいをつくり上げました。仕事とプライベートが心地よく融合した暮らし方と空間で、活動の幅が広がったというIさんご夫妻に、家づくりについてお話をお聞きしました。

料理家夫妻とこだわりキッチン

何も手を抜かずLDKに予算を集中。
人を迎える場としてのこだわり

——広いLDKに、大きくてオープンなキッチンがゆったりと鎮座しています。キッチンスタジオのような空間ですね。

ご主人: 以前住んでいた賃貸住宅でも、料理教室とホームパーティーを開催していました。中古マンションのリノベーションをするなら、その活動に合わせてキッチンを中心とした、人をおもてなしする場所として家をつくりたいと思っていたんです。「キッチン5:居室1」くらいの配分をイメージしていて、玄関を開けたらオープンなLDKが広がっている空間にしたいと希望しました。

奥さま:設計は松島潤平さんにお願いしました。インタビュー記事などを読んで、コンセプチュアルな設計と背景がある家づくりに共感しました。私たちも選ぶモノやコトのストーリーをとても大切に考えているので、私たちのこだわりに応えてくれるのではと感じました。

料理家夫妻とこだわりキッチン
料理家夫妻とこだわりキッチン
玄関をくぐると、奥行きのある広々とした空間が広がる

——プランはどんな風に決めていったのですか?

ご主人:松島さんと打ち合わせをして希望をお伝えしたところ、3つのプランを提案してくれました。そのなかで「本命」ということで推してくれたプランが現状のプランです。長方形の空間を活かし、長手方向に玄関から庭までが一直線に抜けていて、約3分の2がLDK。残りの約3分の1を壁で仕切り、個室や水まわりを収めています。僕は一目でこのプランが気に入りました。妻はあまりに斬新なプランだったため、少し迷ったみたいですが…。

奥さま:自分たちでも仮のプランを考えたりして「子どもが生まれた時にどう暮らすか?」など、これからの暮らしをシミュレーションしていたのですが、このプランを見た時には全く想像がつかなかったので、いったん考えたいと思ったんです。でもしばらくシミュレーションして、暮らしのシーンもいろいろイメージでき、やっぱりこれがいいと確信しました。

ご主人:壁のなかには、寝室、ウォークインクローゼット、将来の子ども部屋、パントリー、浴室、洗面、トイレがあります。壁のなかにプライベートな空間やバックヤードをまとめて、LDKはゲストを迎える場として徹底しました。LDKは何も手を抜かず、妥協もしていません。一方で個室の壁は、自分たちでペンキを塗ったり、造作家具を省略したりして予算を調整しました。

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——人を招く空間ということで、気を配ったポイントなどはありますか?

ご主人:コンロはガスがよかったのですが、料理教室でも使用するため、生徒さんが近くにきても熱くないようにIHにしました。セレクトは妥協せず、ほとんどのメーカーのショールームをまわりました。その中でも出力が高いものを求めて「GAGGENAU」のIHを選びました。機能的にもデザイン的にも気に入っています。
あとはLDKの照明を無段階調光できるようにしました。夜の食事会では、徐々に照明を落とすなどして雰囲気づくりをしたかったからです。照明のスイッチパネルにもこだわり、作家さんにつくってもらいました。

料理家夫妻とこだわりキッチン
見た目にも美しい照明のスイッチパネル。非常ボタンのおさまりにも、家具作家のこだわりと技が光る
料理家夫妻とこだわりキッチン

主役のキッチン、ゲストの目に触れる棚や壁は、
すべて家具職人による造作

——キッチン、食器やキッチンツールなどが並ぶ収納棚は、すべて家具職人による造作だそうですね。すごく丁寧につくられていますね。

ご主人:松島さんから、LDKの棚やキッチン、個室を仕切る壁など、ゲストの目に触れる部分は、すべて家具職人による造作にしたいと提案がありました。「エッジの効いた職人集団」である「イノウエインダストリィズ」に依頼することも併せて提案していだき、私たちも彼らの実績を見てビビッときたので、松島さんの提案通りに進めることに決めました。

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キッチンの背面の壁は一面に千本格子のような棚をつくりましたが、この棚の棚板や側板は9mmという薄さ。強度を保ちながら、見た目の印象にこだわって造作してもらいました。熟練の職人技が活かされているところだと思います。
素材はラワン合板と有孔ボードを使用しています。予算的な都合もあって選んだ素材ですが、繊細な造作でラフすぎない印象に仕上がっていると思います。

奥さま:有孔ボードの壁はものを引っかけられるので便利ですね。植物のプランターなどを飾って楽しんでいます。キッチンのカウンターはステンレスです。それだけでも十分広いのですが、それとは別に大人数が座れるダイニングテーブルも造作してもらいました。

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——室内には植物がたくさん飾られていますね。庭にもウッドデッキがあって、ハーブなども育っています。植物はお好きなんですか?

ご主人:広い庭があったことが、この物件を選んだ決め手の一つでした。ガーデニングは前からしたいと思っていましたね。料理をつくるときにもハーブをよく使うので、庭から摘んできて新鮮なものを使えたらいいなと思ったんです。庭、室内ともにもっと緑を増やして森のようにしたいです。

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——選ばれた物件は築40年と、少し古めの中古マンションですが、不安などはありませんでしたか? また、他に気に入ったポイントはありましたか?

ご主人:前も築40年オーバーのマンションに住んでいました。古いものが大好きで、むしろヴィンテージマンションに住みたいと考えていたんです。中古であることや築年数が経っていることには、何の抵抗も不安もありません。既製品ではなく一つひとつ手でつくられたパーツなど、古いマンションが醸し出す空気感は、新築にはない良さだと思います。大量生産のために効率化されているものにはあまり魅力を感じません。
あとは料理教室や食事会で人を招くことが多いので、便利なエリアにあることと、駅から近いことも重要なポイントでした。

料理家夫妻とこだわりキッチン

チャンスが向こうからやってくる家。
場所があるからアイデアをすぐに形にできる

——料理教室や予約制の食事会についても詳しくお聞かせください。どのような経緯で始められたのですか?

ご主人:もともと料理が好きなので、家に人を招いて振る舞うことは昔からしていました。最初は普通のホームパーティーだったのですが、そのうちに教えてほしいという声が上がるようになり、料理を通じて場を想像するおもてなしユニット「てとてと」として、料理教室を開催するようになりました。ホームパーティーのほうも、集まる人たちにテーマが生まれてきて、人と人がつながって新しいビジネスやプロジェクトが生まれるような場になってきたので、僕たちもテーマに合わせたおもてなしをするようになりました。現在では事業化していて仕事の一つとして取り組んでいます。土日はほぼすべて料理教室か何らかの食事会をやっていますし、平日の夜も多い時には週3回ほど開催しています。

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奥さま:この家に引っ越してきてからまだ1年余りですが、食事会はすでに60回以上開催していて、回数も格段に増えました。家に合わせて「てとてと」の活動も発展しているのを感じます。

ご主人:この家はオフラインのホームページのようなもの。空間の雰囲気などから、僕たちの好きなものを知ってもらう自己紹介のツールにもなっているのを感じます。食事会の時にアイデアが出ることも多いのですが、場所があるから、それをすぐに形にすることができるのもいいですね。たとえば、食事会の参加者の得意分野を活かして、「今度ワークショップをしよう!」という話になったら、「じゃあ場所はここでやればいいから、いつやる?」という話になって、すぐに実現するんです。話してみたい人、会ってみたい人にもアプローチしやすいですね。将来的にはギャラリーとして展覧会などの企画もやってみたいと思っています。

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奥さま:それもこの家を見て私たちのことを知ってもらえるから、具体的にアイデアが出てきやすいんだと思います。参加者の方からいろいろな提案を受けることが多く、素敵な機会が向こうからやってくるように感じています。プライベートと仕事の境目はほとんどありませんが、今はそれが楽しくて仕方がないんです。

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お食事会でも人気者な、メインクーンの猫ちゃん。造作した専用窓でLDKと個室を行き来できる
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■「てとてと」公式サイト : http://tetoteto.info

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文:村田保子/撮影:中村絵
取材・撮影:2017年10月
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